Profile 06 David Stark (デイヴィッド・スターク)

名前:David Stark (デイヴィット・スターク):天文学
出身地:アメリカ合衆国 メリーランド州ブーイ
職位:Kavli IPMU 特任研究員
おすすめの書籍 : “Dune”  著:Frank Herbert
日本で好きな場所: 秋葉原のフクロウカフェが大好きです。それに日本のお寺や神社はみんな美しくて素敵です。でもフクロウが少ないのが残念ですが…。


現在のご研究について教えてください。

どうやって銀河群が形成されるのか? 大きな星形成銀河と小さな星形成銀河、もはや星形成の起こらなくなった銀河、これらはなぜそういう銀河になっているのか? こうした多様性はなぜ生じるのか? といった疑問に関心があります。こうした大きな疑問とこれらに対する多くの異なる手法での取り組み方があります。そこには様々な物理特性が存在しています。

私は銀河のガス組成を調べるというやり方で取り組んでいます。銀河のガス組成はとても重要な点です。銀河の写真を見てもガスをみることはできませんが、ガス無しでは銀河を形作る星は生み出されないことから、ガスは重要な役割を果たしています。私のプロジェクトでは、銀河のガスの量がどのような影響をもたらすのか、どういった銀河がガスにどんな影響を与えて星へと変化させていくのかといった疑問に焦点を当てています。

現在私は、MaNGA サーベイを用いた2つのプロジェクトに主に取り組んでいます。MaNGA は面分光サーベイのために、銀河全体にわたり分光データを得られます。それにより、銀河全体の至るところでの銀河の運動や化学組成、星質量、星形成率といった項目を調べられます。私は、このデータを用いて銀河のガスの振る舞いを理解しようとしています。

1つ目のプロジェクトでは、銀河内で星形成が生じる環境に注目しています。星形成については2つの視点から注目できます。ガスの局所的な状態によるものとして考えるか、あるいは銀河のもっと大きな特性が全体に影響をもたらしているかもしれないという点です。私が MaNGA で行なっていることは、星形成を説明する2つのアプローチについて調べることです。

もう1つのプロジェクトでは銀河の運動に着目しており、銀河が回転する様子を特徴づける新しい手法について研究しています。もし、円運動で回転する完全な銀河を考えると、そこでは全てが対称であり標準的です。私がしてきたことは銀河の運動を追う新しい手法に関する仕事ですが、全ての銀河がそんな運動をしているわけではなく、私が見つけたのは、銀河が単純な回転とはかけ離れているという特異なパターンがあるということです。ある種のガス流入による可能性があり、私にとって大変興味深いことです。そして、銀河がガスをどのようにして得るのかという包括的なメカニズムにも関心を持っています。


今抱く疑問に対する答えが得られた際には、次に何をしますか?

私の研究の次のステップでやりたいことは何かというと、私の解析に時間軸を加えることです。私がしてきたことのほとんどは、局所宇宙における銀河の性質に注目することです。例えば私は、沢山のガスがある銀河やガスの少ない銀河の環境を調べてきました。すると、ある環境の銀河ではガスが極端に少ないということに着目したり、それがなぜなのかをじっくり考えることになります。でも、銀河が進化していく過程を見ることなしに、なぜ銀河がそうなるのかということを説明にするのは、判断材料が乏しく困難です。数十億年という時間スケールでは、個々の銀河について判断できません。でも、どんどん遠くの天体を調べることで、時間経過毎に銀河群を調べていくことができます。私は HSC を使って探っていきたいと考えています。HSC であれば、時間経過でどのように銀河の構造や星形成が変化しているのかを観ることができます。更に ALMA 望遠鏡を使えば、時間でガス組成がどう変化しているのかについても調べられます。これらのデータによって、どれくらいの速さで銀河が変化していくかに制限を与えられ、物理過程に対しても強い制限を与えられます。


Kavli IPMU で研究するにあたり気に入っていることは何でしょうか?

概してとても素晴らしい環境だと私は思います。研究するにも皆友好的です。Kavli IPMU の人達は、誰に対しても柔軟性を持って接していることは驚くべきことで、望めばすぐに沢山の人と共同研究ができます。ビジター研究者も常にやってくるので、いつも新しい人との会話があります。特に、外国人研究者に対する支援は素晴らしく、日本での暮らしの様々を調べるのに沢山の時間を浪費しないよう助けてくれます。
 

銀河中のガスに関する研究をしようと決めた決定打は何でしたか?

私の天文学への関心は、いつからだったかはよく覚えていませんが、天文学は面白くかっこいいものだといつも感じていたように思います。私には、天文学への関心を育んでくれた先生との決定的な出会いがありました。中学生と高校生の時の物理の先生は、天文学に対する私の関心を後押ししてくれ、熱中するきっかけを与えてくれました。実際、高校で研究プロジェクトをするよう私に手助けしてくれました。

大学に入って、天文学をやりたいとは思っていたものの、その時点では正確に天文学の何をやりたいのかは自分でもよくわかっていませんでした。太陽系や銀河、宇宙論と分野の異なるクラスを徐々に受けていきました。そして、いくつかの理由により、私は銀河に興味を持つようになりました。銀河を調べれば調べるほど、どんどん銀河の面白さに気づきました。

学部生の時の私の指導教官は、銀河のガス組成に関するプロジェクトに携わっていました。特に、どのようにして膨大なガスの集積が起こり、星へと変化していくのかといった内容でした。そして、その内容にどっぷり浸かって非常に面白いと思うようになったのです。こうして、取り組んでみたかった一連の新しい疑問に相対し、そこから今の研究内容へと飛び立ったのです。


研究内容はどこで拝見できますか?

下記 URL の私のウェブページにて研究概要や論文情報を載せています。
http://member.ipmu.jp/david.stark/index.html