斎藤恭司

Kyoji SaitoKyoji Saito 

単位円周の長さは 2πという最も古い数学の対象です。よく知られるように単位円Cは二次方程式 x2+y2=1 で与えられ、複素数 z=x+iy を使えば となります。このような積分を周期積分、その値を周期と呼びます。理由は不定積分 ∫dz/z の逆関数が を周期とする指数関数だからです。また、この周期積分はA1型のリー環により記述できます。次に円周Cのかわりに定義方程式が三、四次の曲線上の複素積分を考えると、2つの基本周期をもつ楕円積分が現れ、その不定積分の逆関数が楕円関数となります。これらの周期積分は位数2のリー環A2、B2、G2で記述されます。このように周期積分を通して深い数学構造が次々に現れるのは面白いことです。

私はこれらの周期積分を高次元化する積分形式としての原始形式を圏論的に構成するために、無限ルート系と無限次元リー環を研究しています。その研究過程で生まれた平坦構造(フロベニウス構造)と平坦座標という概念は、不思議なことに物理におけるストリング理論のミラー対称構造を記述する言語のひとつにもなっています。原始積分による周期写像の逆写像の平坦座標成分である原始保型形式の決定は、今後の重要課題です。