Belle II

SuperKEKB加速器で行われるBelle II実験はB中間子崩壊の詳細な測定を通して標準理論のフレーバー部分を解明し、そこに現れると予想される新しい物理の探索を目指します。これまでより数十倍精度を上げた測定が標準理論を越える新しい物理が掘り起こすと期待されています。

SuperKEKB加速器は非対称エネルギーを持つ電子-陽電子衝突型加速器で、これまでのKEKB加速器に比べて40倍のルミノシティーを持ち、より大量のB中間子と反B中間子を作り出すことができます。SuperKEKB加速器は2016年に試験運転 (Phase1) を開始し、電子および陽電子ビームの調整を行いました。2017年4月にBelle II測定器を衝突点に移動し、同年秋までに崩壊点位置検出器以外の測定器を組み込みました。そして2018年3月にSuperKEKB加速器と測定器の運転 (Phase2) を開始し、4月26日にはとうとう電子と陽電子の初衝突に成功し、Belle II測定器は衝突により生成された事象の信号を記録しました。

SuperKEKB加速器の高ルミノシティーを最大限に活用できるよう、Belle測定器もBelle II測定器に改良します。Kavli IPMUのグループでは、Belle II測定器のうちB中間子の崩壊点位置の検出に使われるシリコン崩壊点位置検出器の研究で主導的役割を果たしており、とくに実験室内のクリーンルームではシリコン崩壊点位置検出器の製作を進めてきました。実験室ではこれまで、検出器内にシリコンセンサーを100μmの位置精度で配置する技術、1mm以下の精度で接着剤の広がりを制御して検出器の形を作る技術、センサーと読み出し集積回路を1万本以上の25μmアルミニウムワイヤーで結線する技術、製作した検出器の性能を保証しさらに高性能を維持する技術など、多くの技術を開発してきました。そして2018年5月にはすべての検出器の製作を完了させることに成功しました。製作された検出器は茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構に順次輸送されて、検出器の構造体に据え付けられます。構造体に据え付けられた検出器全体の性能は宇宙線を使って評価され、2018年10月に最内層に位置する他の検出器(PXD)と組み合わされ、最終調整を経て2018年11月にBelle II測定器に取り付けられました。

SuperKEKB加速器は2019年3月11日に運転を再開し、Phase 3運転を開始しました。Belle II実験では、崩壊点位置検出器を含むBelle II測定器のすべての検出器を使って本格的な物理実験を進めて行きます。

(Last update: 2019/3/12)

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