機構長から

 

(Kavli IPMU 年次報告書2015の機構長巻頭言より:原文は英語です)  

村山斉  

カブリ数物連携宇宙研究機構(以下Kavli IPMU)は2007年10月1日に設立されました。私たちは、宇宙に関する5つの疑問に取り組むことを目標としました。その5つの疑問とは、宇宙はどのように始まったのか? 宇宙は何で出来ているのか? 宇宙はどんな運命を迎えるのか? 宇宙を支配する法則は何なのか? 私たちはなぜこの宇宙に存在するのか? です。数学、物理、天文学を組み合わせ、加速器実験や地下実験、天文観測も行い、それらの謎に取り組んでいます。Kavli IPMUは文字どおりゼロから始まりましたが、今では、大学院生や事務職員も含め150名もの人が日常的に活動する研究所へと成長しました。


2015年は私たちにとって大変嬉しいことがありました。それは Kavli IPMU の主任研究員を務めていただいている東京大学宇宙線研究所梶田隆章所長が2015年のノーベル物理学賞を受賞したことです。ニュートリノ振動に関する彼の歴史的大発見は、「私たちはなぜこの宇宙に存在するのか?」に迫る上で、長年にわたる謎を解く鍵を与えてくれました。ニュートリノにわずかな質量があることによって、物質と反物質との間のバランスが崩れ、物質と反物質が完全に対消滅し消えて無くなることが阻止されたことで、私たちは今この宇宙に存在しています。この一連のメカニズムについては、Kavli IPMU の福来正孝と柳田勉が提唱した有名な理論があります。梶田所長の発見は、我々も主導的役割を果たしている T2K 実験や KamLAND-ZEN 実験を含むニュートリノ実験の原動力ともなっています。


私たちは、WPI の4つのミッション (科学, 融合, 国際化, システム改革) を強力に推し進めてきました。この年次報告書では「リサーチ・ハイライト」として特に輝いている研究成果を取り上げています。「ティータイム」は数学と物理、天文の分野間での相互作用を生み出すのに大切な役割を果たしています。卓越した国際的研究環境を示す指標として、ポスドクに毎年多数の応募があること、800名近いビジターがあり、そのうちおよそ半分は海外からのビジターであること、非常に有名な国際的ワークショップが17もここで開催されたことなどが挙げられます。Kavli IPMUは大学のシステム改革を積極的に進めており、その成果は東京大学業務改革総長賞受賞にもつながっています。


私たちは、Kavli IPMU我々の研究分野に統計学を取り入れるという野心的な計画を提案しました。他にも、国際卓越大学院コース (GSGC) といった新たな国際的大学院生養成プログラムへの参加、さらにオックスフォード大学から大学院生を招聘するための新しい独自の枠組みも作りました。CMB 偏光観測衛星 LiteBIRD などの新しい研究プロジェクトも進めています。これらの取り組みによってKavli IPMUを今後も持続的に維持していきます。私たちの未来はさらに輝いています!