VLA、ALMAの組み合わせで初めて見た星誕生の地

2017年2月17日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)
 

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) の Wiphu Rujopakarn (ウィプー・ルジョーパカーン) 特任研究員らを中心とする、アメリカ国立電波天文台 (NRAO)、エディンバラ大学、ヨーロッパ南天天文台 (ESO) の研究者を含む国際研究チームは、アメリカニューメキシコ州にあるカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡 (VLA) と南米チリのアタカマ高原にあるアルマ望遠鏡 (ALMA) の二つの電波望遠鏡を用い、89億光年から115億光年遠方の銀河を観測し、星形成が盛んだった頃の星形成の現場を初めて精細に捉えました。
 

今回観測した銀河の時代は宇宙で星形成が盛んであり、現在の宇宙におけるほとんどの星はこの頃に生まれたと考えられています。しかし、星形成が盛んな銀河は星形成の活発さゆえに塵が多く存在しており、塵に遮られてしまう可視光では星形成の現場を詳しく観測することは困難です。今回の観測では、ハッブル宇宙望遠鏡が遠方の銀河を捉えた Hubble Ultra Deep Field (ハッブル・ウルトラ・ディープフィールド, HUDF) から星形成が盛んな頃の銀河11個を選び、それらについてアルマ望遠鏡 (ALMA) とカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡 (VLA) の二つの電波望遠鏡で観測を行いました。
 

その結果、アルマ望遠鏡 (ALMA) では星形成に必要な冷たいガスの分布を捉えることができ、カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡 (VLA) では星形成が引き起こされている場所を観測することが出来ました (図1, 図2) 。現在の宇宙では銀河の合体が起きているなど限られた領域で星形成が盛んなのに対して、今回観測した銀河では全ての銀河で星形成が広い領域で活発に行われていました。この星形成の活発さは、現在の普通の銀河に比べ20倍にもなります。

 

今後、本研究のような電波とミリ波を組み合わせた観測により多くの銀河の星形成の現場を精細に捉え解析することで、どのようなメカニズムで当時の銀河で星形成が行われていたのかや現在とのメカニズムの違いに迫れると考えられ、ひいては銀河進化の歴史の解明に繋がることが期待されます。
 

本研究成果は、アメリカ天文学会の天体物理学誌アストロフィジカル・ジャーナル (Astrophysical Journal) に2016年12月1日付で掲載され、2016年12月20日にアメリカ国立電波天文台 (NRAO) 及びアルマ望遠鏡 (ALMA) から発表された成果です。

詳しくはアメリカ国立電波天文台 (NRAO) のプレスリリース及びアルマ望遠鏡 (ALMA) のプレスリリースをご覧下さい。
 

論文情報
雑誌名:「Astrophysical Journal」(ApJ,833,1)
論文タイトル:VLA AND ALMA IMAGING OF INTENSE GALAXY-WIDE STAR FORMATION IN z ~ 2 GALAXIES
著者:W. Rujopakarn et al.

DOI: 10.3847/0004-637X/833/1/12(2016年12月1日掲載)
論文のアブストラクト (Astrophysical Journalのページ)
論文のプレプリント (arXiv.orgのページ)
 

問い合せ先

研究内容について
Wiphu Rujopakarn(ウィプー・ルジョーパカーン)[英語での対応]
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 特任研究員
E-mail: wiphu.rujopakarn_at_ipmu.jp Tel: 04-7136-6555
*_at_を@に変更してください

報道対応
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 広報担当
小森真里奈
E-mail: press_at_ipmu.jp Tel: 04-7136-5977
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