天体素粒子物理学

暗黒物質

その存在が多くの天体物理学的証拠で支持されているにも拘わらず、暗黒物質粒子(あるいは粒子たち)が何かは謎のままである。暗黒物質粒子の相互作用は重力以外わかっていないので、いろいろな可能性を調べなければならない。

ひとつの必要条件は暗黒物質が宇宙の時間スケールでは安定でなければならないということである。安定性はしばしば対称性につながっている。したがって、どのような対称性が暗黒物質の安定性を保障するかという観点からその特性に迫ることもできる。バリオン数とレプトン数の違い、B−L、は強力な対称性である。もし暗黒物質がこの対称性を持つとすると、新しい物理の詳細にかかわらず暗黒物質は一義的に決まる質量を持つことが伊部、松本、柳田によって示された。この研究では説得力のあるふたつの例が示されたが、その一つは最近報告された実験の異常信号をうまく説明できる。

松本たちは対称性と暗黒物質の関連に関する別の可能性も追究した。弱い相互作用をする重い粒子(WIMP)はTeVエネルギー領域の多くの新物理模型に現れる最もポピュラーな暗黒物質である。松本たちの予言によると、もしWIMPがTeVエネルギー領域で破れるゲージ対称性に関連したベクトル粒子であるならば、ヒッグズ粒子の質量は120−125 GeV程度になるはずで、LHC実験から予想される範囲と一致する。

真剣に検討されているもうひとつの暗黒物質候補はアクシオンと呼ばれる非常に軽いスケーラー粒子である。川崎たちによると、場の理論のトポロジカルな特性のために初期宇宙で形成されたかもしれない、ドメイン・ウォールの崩壊からこの粒子が生成された。これだと大量の残留アクシオンの生成が可能で、アクシオンの特性や暗黒物質の理解に関連してくる。

面白い可能性として、暗黒物質と通常の物質両方は初期宇宙の同じ過程から生成されたと考えることもできる。興味深いのはこの2種類の物質の量があまり違わないということである:お互いの一桁以内で、もしなんの関連もなくそうなのならまったく思いがけない偶然といわざるをいない。川崎たちは超対称Qボールの崩壊からアクシオン暗黒物質が生成されるというシナリオを提案した。別の論文で粕谷と川崎はQボール崩壊で生成されるグラビティーノ暗黒物質を調べた。

暗黒物質はニュートリノに関連している可能性もある。ニュートリノ質量は、通常の左巻きニュートリノのパートナーとして右巻きニュートリノを導入することによって(有名なシーソー機構)、非常にエレガントに説明される。スプリット・シーソー模型やその他の模型でごく自然に出てくるように、もし右巻きニュートリノのうちのひとつが小さいマヨラナ質量を持つと、結果的に軽質量のステライル・ニュートリノが暗黒物質の役割を果たす。クセンコとロ-エンスタインはX線望遠鏡による目的を絞った探索によるステライル暗黒物質を探し続けている。彼らは歪セフィーロイド銀河の観測に基づいた新しい制限を発表した。

超巨大ブラックホールのその後

我々の天の川銀河も含めた銀河の中心には超巨大ブラックホールが存在する。しかし、今のところ生成過程の納得のいく説明はない。巨星の進化から太陽の数倍の重さのブラックホールが作られることは可能だが、太陽の100万倍もある巨大ブラックホールの起源については謎のままである。さらに、クエーザーの観測からはこれらの物体が高赤方遷移の距離、つまりはるかな昔、にすでに出来ていたことがうかがわれ、原始的起源を示唆している。観測事実によると初期のブラックホール質量は太陽質量の105倍近辺の狭い領域に集中していて、合体や降着を通して出来たかもしれないことを示している。川崎、クセンコ、柳田は超巨大ブラックホールの原始的起源を説明するシナリオを考えだした。宇宙のインフレーションは、比較的平坦なポテンシャルの中をゆっくり動くスカラー場がエネルギー密度の大部分を占める時に起こる。標準理論を超える物理理論によれば、そのようなスカラー場は数多くあり、インフレーションは平坦な方向に迷路のような複雑な道筋をたどる。すなわち、2段階あるいは多段階のインフレーションは超対称性や超弦理論の一般的特徴である。インフレーションがこのようにある段階から別の段階に遷移する時に密度揺らぎのスペクトラムが原始ブラックホール発生を引き起こす特徴を持つようになる。この過程の最終段階で太陽質量の105倍という特徴的な質量がでてきて、超巨大ブラックホールの起源を説明することができる。

太陽質量の1億倍を超えるような超巨大ブラックホール宇宙で最も強力な放射源になる。巨大ブラックホールは活動銀河の中心でガスや星物質を吸収し、超高エネルギーのガンマー線を噴出して、自分が作り出す強力なジェットの中でそれはさらに加速させる。TeVエネルギー領域のガンマー線は、星の光やダストから再放射される紫外線との相互作用でエネルギーを失うため、長距離を飛ぶことができない。それにもかかわらず、はるか遠方にある物体から飛んでくる超高エネルギーのガンマー線が観測されていることは謎となっている。これまではローレンツ不変性の破れと光子と混ざって存在するアクシオンのような粒子の存在が可能な説明とされてきた。しかしクセンコたちは観測されたスペクトラムと、赤方遷移への依存性が比較的に弱いことから、それらが元の源からのものではなく、視界方向の宇宙線との相互作用によるものであることを示した。この解釈ははるか遠方の銀河間の、ビッグバンの頃から原始的な種となった場が存在したかもしれない、膨大な空間の磁場測定の必要性を示した。さらに、宇宙の星形成の歴史を明らかにするかもしれない、銀河外の背景光を正しく測定することができる。

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