IPMU始動、初の国際会議

2007年12月17日
数物連携宇宙研究機構(Institute for the Physics and Mathematics of the Universe : 略称 IPMU)

数物連携宇宙研究機構 (IPMU) の初の国際会議が今日から始まる。 IPMUは今年10月に、文科省の世界トップレベル国際研究拠点の一つとして発足した。「世界に見える拠点」をめざし、宇宙の根本的な問題に迫ることを目的とする。宇宙はどうやって始まったのか? 何で出来ているのか? 我々はなぜ存在するのか? 来年スイスのジュネーブで予定されている大ハドロン衝突加速器 (LHC) における実験は、こうした宇宙の深遠な問題に迫るために決定的に重要だと機構の研究者は考えている。この国際プロジェクトは、「人類史上最大の科学実験」とも言われ、日本はその主要な参加メンバーである。今週の会議には世界各国から20名の研究者が来訪し、LHCの莫大なデータから、宇宙の仕組みの解明に役だつ情報を引き出す方法を議論する。

この会議は、LHCや宇宙の暗黒物質についての研究で世界的に知られる野尻美保子教授(高エネルギー加速器研機構所属)が中心になって組織された。野尻教授は、我々を銀河に結びつけている未知の暗黒物質の正体をLHCのデータから解明する可能性に特に興味を持っている。「何十億メガバイトというLHCのデータを有効に使うためには、事前にやっておくべき仕事がまだ山のようにあります」という。

「フォーカスウィーク」と呼ばれるこの会議の特徴は、参加者にざっくばらんな議論をさせ、科学の進歩のために不可欠な研究者の間の意見・情報交換を可能にすることだ。フォーカスウィークの構想は、一月にカリフォルニア大学バークレイ校から着任する機構長の村山斉教授が考えだした。「今までの会議のフォーマットでは、参加者が意味のある議論をすることができませんでした。」という。フォーカスウィークでは、会議期間中に意図的に何の予定も組まれていない時間が十分に設けられ、発表者の人数も最低限に絞られている。

次回のフォーカスウィークは三月に予定され、未だはっきり分かっていないニュートリノの質量に、実験室での測定、天文観測、理論的な考察を組み合わせて迫っていく。