平成22年度日本学士院賞受賞 --佐藤勝彦主任研究員--

IPMU主任研究員であり特任教授の佐藤勝彦氏が平成22年度日本学士院賞を受賞されることが決定いたしました。

授賞理由は以下の通りです。

加速的宇宙膨張理論の研究

佐藤勝彦氏は、国際的に認められている業績をあげた、宇宙論研究の第一人者です。そのなかで特に有名な業績が、インフレーション理論と通称され、その後の観測によって定説となった「加速的宇宙膨張理論」です。
宇宙が膨張していることは、1929年に発表されたハブルの法則で明らかになり、その初めにビッグバンと呼ばれる爆発があったことは、1964年の絶対温度3度の宇宙背景輻射の発見で裏打ちされました。
ビッグバンがどのようにして起きたかについて、人々を納得させる理論を考え出したのが佐藤氏であり、すなわち、同氏は、力の統一理論に基づき、誕生直後の宇宙が加速的に急激な膨張を起こし、その後、宇宙は熱い火の玉となったという理論(加速的宇宙膨張理論)を、世界に先駆けて提唱しました。この理論によって、宇宙は一様な構造を示す一方、その中で超銀河団(多くの銀河の集団)などが生まれたという過程の基礎を与えました。
佐藤氏の理論は、1990年代以降に打ち上げられたNASAの宇宙背景輻射観測衛星の観測データにより、更に確かめられました。

  佐藤勝彦教授佐藤勝彦教授
【用語解説】
ハブルの法則
遠方の銀河はわれわれから遠ざかっており、その後退速度は銀河までの距離に比例するという、ハブルが発見した法則。宇宙が一様・等方的に膨張していることを示す。
宇宙背景輻射
宇宙の全方向からほぼ均等にやってくるマイクロ波のこと
力の統一理論
物理学における基本的力には、重力、電磁力、強い力、弱い力の4種類がある。4つの力をまとめた統一理論はまだ完成していないが、1970年代、重力を除く3つの力だけを扱う大統一理論が提唱され、研究は大きく進んだ。
 

日本学士院より転載

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