2010年度(第5回)素粒子メダル奨励賞受賞 --Seong Chan Park--

2011年2月7日
数物連携宇宙研究機構(Institute for the Physics and Mathematics of the Universe : 略称 IPMU)

大阪大学の尾田欣也助教とIPMUのSeong Chan Park研究員が2010年度(第5回)素粒子メダル奨励賞を受賞いたしました。

受賞業績の題目: "Rotating black holes at future colliders: Greybody factors for brane fields"

Physical Review D67 (2003) 064025 Erratum Physical Review D69 (2004) 049901

Daisuke Ida, Kin-ya Oda, Seong Chan Park

Seong Chan ParkSeong Chan Park

授賞理由:

素粒子標準模型に内包する問題であるゲージ階層性の問題の有力な解として余剰次元を持つ模型が提唱され、盛んに研究されてきた。とりわけ、物理の基本スケールがテラスケールにある場合には衝突型加速器実験でブラックホールの生成が起こりうることが指摘され注目を集めた。しかしながら初期の研究においては、極めて単純な仮定に基づいたブラックホールの生成が議論されていた。
本論文において尾田氏・Seong Chan Park氏らは、4次元ブレーン上での場の方程式を解析することによりホーキング幅射のスペクトルを世界に先駆けて具体的に求め、さらにブラックホールの生成・蒸発における角運動量の役割を議論した。特に、生成されたブラックホールは一般に大きな角運動量を持つこと、その場合のホーキング幅射は大きな異方性を持つことを発見したことは、先行研究による単純な描像に大きな変更をもたらし、その後のこの分野の研究に大きな影響を与えた。

本論文の共著者である井田大輔氏は素粒子論グループの会員でないため授賞対象にならないが、選考委員会は井田氏の貢献を受賞者と同様に高く評価することを付記する。