第16回日本物理学会論文賞受賞 --杉本茂樹特任教授--

2011年4月13日
数物連携宇宙研究機構(Institute for the Physics and Mathematics of the Universe : 略称 IPMU)

IPMUの杉本茂樹特任教授が第16回日本物理学会論文賞を共著者の畑浩之氏、酒井忠勝氏、山戸慎一郎氏と共に受賞いたしました。

日本物理学会論文賞は、独創的な論文により物理学の進歩に重要な貢献をした功績を称え、研究者に授与されます。

受賞業績の題目: Baryons from Instantons in Holographic QCD
掲 載 誌: Prog. Theor. Phys., Vol.117 No.6 PP1157-1180, (2007)
著 者 名: Hiroyuki HATA(畑 浩之)、Tadakatsu SAKAI(酒井忠勝)、Shigeki SUGIMOTO, (杉本茂樹)、Sinichiro YAMATO (山戸慎一郎)

受賞理由:

超弦理論の研究から発見されたゲージ重力対応は、近年様々な物理系に応用され大きな理論的展開を見せている。これは、強結合ゲージ理論のゲージ群が大きい極限を仮想的な高次元理論と結び付ける対応であり、ゲージ理論に対する新たな見方や計算法を与えている点で重要である。
本論文は、ゲージ重力対応を量子色力学に応用し、バリオンのスペクトルを強結合で計算した論文である。著者の内の二人は、本論文に先立って超弦理論のD ブレーン模型に基づく量子色力学の有効理論(酒井・杉本模型)を提案し、そのカイラル対称性の破れなどの面が現実のハドロンの描像と一致することを明らかにし、大きな注目を集めた。本論文では、この理論がスキルミオン模型と解釈できることに着目し、高次元インスタントンの量子化の解析を行うことにより核子の励起状態のスペクトルを計算し、得られた結果が定性的には現実のバリオンのスペクトルと一致していることを示した。この研究は、本論文以降のホログラフィックQCDのバリオンの解析の端緒となった。量子色力学の質量生成機構の解明は、強結合ゲージ理論の基本的な問題である。著者らが定性的でもバリオンのスペクトルを解析的な方法で導出することに成功したことは、ハドロン物理学の基礎的な部分の解明に寄与したと言ってよい。
以上のように、本論文は高いオリジナリティーを持ち、その後の関連する研究への大きなインパクトを与えており、日本物理学会論文賞にふさわしいと認められる。

【日本物理学会より転載許可済み】

授賞式は4月9日(土)に日本物理学会本部にて行われました。

関連サイト