すばる望遠鏡、銀河核からのアウトフローを重力レンズで立体視

2013年2月19日
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)

クェーサー SDSS J1029+2623 (約100億光年)、銀河団 (約50億光年)、および観測者のいる地球の位置関係、および重力レンズ効果の概念図。(クレジット:信州大学・国立天文台)クェーサー SDSS J1029+2623 (約100億光年)、銀河団 (約50億光年)、および観測者のいる地球の位置関係、および重力レンズ効果の概念図。(クレジット:信州大学・国立天文台)カブリIPMUの大栗真宗特任助教と信州大学、奈良高専、国立天文台の研究者を中心とする研究グループは、およそ100億光年彼方にあるクェーサー (銀河中心核) の姿を2つの別の角度から観測することに成功しました。通常の深宇宙の観測においては、対象となる天体があまりに遠くにあるために、その姿を右から見たり、左から見たりすることができません。本研究では、「重力レンズ効果」を利用して、クェーサーからのガスの流出を別の角度から見ることに成功しました。 これにより、謎に包まれていた小さな銀河中心核から吹き出すガス流には、角度による濃さの違いがあることが確認できました。このガス流は、ゆくゆくは銀河スケールにまで広がり、銀河全体の進化にも影響を及ぼすことになります。今回の成果は、カブリIPMUの推進する「すみれプロジェクト」で用いている、すばる望遠鏡の大集光力とすぐれた分光能力が活かされた観測と言えます。

この研究成果は、米国の天文学専門誌『アストロノミカル・ジャーナル』に掲載されました。(Misawa et al. 2013, The Astronomical Journal, 145, 48)

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