超高輝度超新星からの紫外線放射が解き明かす輝きのメカニズム

2017年9月7日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)

 

1. 発表者
Alexey Tolstov  (アレクセイ・トルストフ) 
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 特任研究員

野本 憲一 (のもと・けんいち)
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 上級科学研究員
 

2. 発表概要
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) のAlexey Tolstov  (アレクセイ・トルストフ) 特任研究員や野本憲一 (のもと・けんいち) 上級科学研究員、Kavli IPMUに滞在し研究を行っているウクライナのハルキウ物理・工学研究所 (KIPT) のAndrey Zhiglo (アンドレイ・ジグロ) 研究員らの研究グループは通常の超新星より極度に明るい超高輝度超新星 Gaia16apd の輝くメカニズムを主要な各モデルについてシミュレーションによって研究し、この超高輝度超新星が紫外線波長で特に明るく輝くという特徴は、超新星周囲の物質との激しい衝突によって最もよく再現できることを示しました。今後、他の超高輝度超新星の輝くメカニズムを特定する研究に役立つと想定されます。本研究成果は米国天文学会の発行する天体物理学専門誌アストロフィジカル・ジャーナル (Astrophysical Journal) に2017年8月3日掲載されました。


3. 発表内容
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) の野本憲一上級科学研究員を含む Alexey Tolstov 特任研究員率いる研究グループは、超高輝度超新星と呼ばれる、通常の超新星の10倍から100倍明るく輝く星の爆発について研究するなかで、最近発見された超高輝度超新星で、16億光年離れた暗い矮小銀河に存在する Gaia16apd に注目しました。

超高輝度超新星 Gaia16apd は異常なほど強い紫外線を放射していますが (図1)、超高輝度超新星がなぜ明るく輝くのかというメカニズムを説明する従来の3つのモデルのいずれに適合するのか分かっていませんでした。重元素ニッケルの放射性同位体である56Niを大量に含むという「電子対生成不安定モデル」、超高速回転をし極度に磁化した中性子星であるマグネターが強い電磁波を放射するという「マグネターモデル」、超新星爆発時の噴出物が、超新星爆発直前に放出していた大量のガスと激しく衝突するという 「衝突モデル」 の3つです (図2)。

研究グループは、多波長放射流体力学計算用コードを用いて各モデルについてシミュレーションを行い、紫外線、可視光、赤外線の各波長の光度曲線、光球半径と爆発の速度が観測をよく再現できるかどうかを調べました。

その結果、Gaia16apd が 「衝突モデル」 の超新星である可能性が最も高いことを発見しました。更にこの数値技法を使って異なる3つの各モデルの紫外線放射を計算する方法を発展させました。研究グループの開発したこの技法は、観測された超高輝度超新星がどのモデルに即しているのかを特定する研究に今後役立つと想定されます。

Alexey Tolstov 特任研究員は今回の成果に関して
「この研究成果は超高輝度超新星の物理をより明確に理解する新たな一歩となることに加え、爆発のシナリオを特定する鍵になると思います。観測と Gaia16apd に似た特異な天体のより詳細なモデル作成は、超高輝度超新星現象の性質を理解するために一層必要となっています」と述べています。

研究グループは次の段階として、他の超高輝度超新星でもシミュレーションを試し、非対称な爆発の詳細やマグネターに関する物理も考慮に入れた、より現実に近いシミュレーションを行っていくことを考えています。

本研究成果は米国天文学会の発行する天体物理学専門誌アストロフィジカル・ジャーナル (Astrophysical Journal) に2017年8月3日掲載されました。
 

4.発表雑誌
雑誌名:「Astrophysical Journal」 
論文タイトル:ULTRAVIOLET LIGHT CURVES OF GAIA16APD IN SUPERLUMINOUS SUPERNOVA MODELS
著者:Authors: Alexey Tolstov1, Andrey Zhiglo1,2, Ken'ichi Nomoto1, Elena Sorokina3, Alexandra Kozyreva4, Sergei Blinnikov5,6,1

著者所属:
1 Kavli Institute for the Physics and Mathematics of the Universe (WPI), The University of Tokyo Institutes for Advanced Study, The
University of Tokyo, 5-1-5 Kashiwanoha, Kashiwa, Chiba 277-8583, Japan
2 NSC Kharkov Institute of Physics and Technology, 61108 Kharkov, Ukraine
3 Sternberg Astronomical Institute, M.V.Lomonosov Moscow State University, 119234 Moscow, Russia
4 The Raymond and Beverly Sackler School of Physics and Astronomy, Tel Aviv University, Tel Aviv 69978, Israel
5 Institute for Theoretical and Experimental Physics (ITEP), 117218 Moscow, Russia and
6 All-Russia Research Institute of Automatics (VNIIA), 127055 Moscow, Russia

DOI:10.3847/2041-8213/aa808e (2017年8月3日掲載)

論文のアブストラクト (Astrophysical Journalのページ)
プレプリント (arXiv.orgのページ)

 

5.問い合わせ先:
報道対応:
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 広報担当 小森 真里奈
E-mail: press_at_ipmu.jp Tel: 04-7136-5977
*_at_を@に変更してください

研究内容について:
Alexey Tolstov  (アレクセイ・トルストフ)[英語での対応]
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 特任研究員
E-mail: alexey.tolstov _at_ ipmu.jp   Tel: 04-7136-6512
*_at_を@に変更してください

野本 憲一 (のもと・けんいち)
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 上級科学研究員
E-mail: nomoto_at_astron.s.u-tokyo.ac.jp Tel: 04-7136-6567
*_at_を@に変更してください


6.参考画像
※下記の画像は http://web.ipmu.jp/press/201709-uvOpt/index.html からダウンロード可能です。