Kavli IPMU 設立11年目を経て、 機構長のバトンは村山斉 初代機構長から大栗博司 新機構長へ

2018年10月15日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)

 

1. 発表概要
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) で2007年10月1日から11年14日間にわたり機構長を務めてきた村山 斉 (むらやま ひとし) 初代機構長が退任し、新機 構長として大栗博司 (おおぐり ひろし) カリフォルニア工科大学教授が就任することになりました (機構長就任挨拶)。文部科学省の世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラム (WPI) に採択され、2007年10月1日に東京大学数物連携宇宙研究機構として発足した弊機構は、数学、物理、天文学の3分野 の連携による融合研究を行いながら、国内外の研究者や一般の方へも認知される国際的な研究所と して成長して参りました。2012年4月には米国カブリ財団の寄附を受け、東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) へと改称、カブリ研究所の一員ともなりました。2017年に10年の節目を迎えた Kavli IPMU は、超弦理論の世界的研究者であり、社会への情報発信の分 野でもこれまで国内外に大きな影響を与えて来た大栗 博司新機構長を迎え、これからますますの発 展を目指します。

機構長就任挨拶はこちら

2. 発表内容
【Kavli IPMU のこれまで】
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) は、文部科学省の世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラム (WPI) に採択され、2007年10月1日に東京大学数物連携宇宙研究機構として9年半の時限付き研究所として発足しました。「宇宙はどうやって始まったのか、その運命は何か、何で出来ているのか、どういう法則に支配されていて、なぜ我々は存在するのか」と言った人類が問い続けてきた宇宙の最も根本的な謎を解明するため、数学、物理、天文学の3分野が分野の枠を超えて研究を行ってきました。毎日平日15時に開催される研究者の集うティータイム、数多くの国際会議の開催等、融合研究を促進する環境が契機となり世界に認められる研究成果を数多く生み出して来ました。それが優秀な人材が世界中から更に集まる好循環となり、人も建物もゼロから始まった弊機構は、現在では外国人研究者が半分以上の国際的な研究所へと成長しました。

そうした成長の過程では、さまざまな大きな節目がありました。1つ目は、2011年1月に東京大学国際高等研究所が設立され、最初の研究機構として認定されたこと。2つ目は、2012年4月に米国カブリ財団から寄附を受け、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) へと改称。世界にあるカブリ研究所の一員になったことです。3つ目は、2015年2月13日に WPI の他の先行4拠点とともに、WPIプログラム開始当初の目的とされていた世界トップレベル研究拠点 (World Premier Status) という地位を確立したという高い評価を受けたことに加えて、Kavli IPMU は2017年から5年間の支援延長を受けることになりました。この高い評価がきっかけとなり、WPI としての支援が打ち切られる2022年以降も Kavli IPMU は東京大学の恒久的研究所としての存続が、五神 真 (ごのかみ まこと) 東京大学現総長より約束されています。
 

【村山斉初代機構長から大栗博司新機構長へ】
Kavli IPMU の村山 斉初代機構長は、カリフォルニア大学バークレー校教授としての研究・教育業務を果たしながら、Kavli IPMU 機構長として、2007年10月1日から機構運営に11年と14日間にわたり従事してきました。優秀な研究者獲得のため海外での活発な研究講演の実施。2012年には内閣府の最先端研究開発支援プログラム (FIRST) に「宇宙の起源と未来を解き明かす -超広視野イメージングと分光によるダークマター・ダークエネルギーの正体の究明」で中心研究者として採択され、これが現在のハワイすばる望遠鏡に搭載した超広視野カメラ HSC による宇宙の大規模広域撮像観測の研究と約 2400個の銀河を同時に分光観測できる超広視野多天体分光器 (PFS) の製作につながっています。このように、Kavli IPMU での研究業務の中心的役割も果たしながら、研究コミュニティ以外への認知度向上も図るため、国内外での一般講演会やメディア出演等数多くこなしてきました。

新機構長に就任する大栗博司カリフォルニア工科大学教授は、素粒子論の世界的研究者です。専門とする超弦理論は、原子のような小さな世界の現象を説明する量子力学の法則と、宇宙のような大きな世界を説明するアインシュタインの重力理論を結びつける理論として提案されている理論です。数学と物理学における幅広い研究業績は国内外から高く評価され、数多くの受賞歴に繋がっています。また、米国カリフォルニア工科大学では理論物理学研究所を立ち上げてその初代所長となり、コロラド州のアスペン物理学センターの所長も務めるなど、研究組織の運営でも信頼されています。さらに、科学を一般向けに情報発信していく活動にも熱心に取り組み、書籍では著書「大栗先生の超弦理論入門」(講談社ブルーバックス) が第 30 回講談社科学出版賞を受賞、科学監修を務めた映像作品『9次元からきた男』は国際プラネタリウム協会の最優秀教育作品賞を受賞しています。

 

村山斉初代機構長は、今回の自身の機構長退任と大栗博司新機構長の就任にあたり
「Kavli IPMU は五神総長のコミットメントによる東大のサポート、文科省からの資金、カブリ財団など民間からの『支援の三本柱』で、今年4月からやっと恒久的な組織になりました。恒久的な研究所は当たり前ですが定期的にリーダーシップの交代がおきます。また、創設期と安定期では、必要なリーダーの資質は違います。そして研究所がうまくいっているときこそ、初代リーダーの引き際だと考えました。WPI の最終審査が2021年の秋にあることを考えると、今交代しないと次の機構長の実績づくりもむずかしくなります。私から次へとバトンタッチするのは、この時期が最善です。もちろん個人的にも日米往復の大変さと、アメリカの家族との距離もずっと気になっていました。総長へそう進言したところ真剣に受け止めていただき、相原副学長のもとに選考委員会を立ち上げ、最終的に大栗さんが候補として決まりました。私から見て、彼以上の素晴らしい候補は思いつきません! 研究面での業績、マネジメントの経験、一般社会への情報発信、国際的な評価、すべての面で完璧な候補です。しかもカリフォルニア工科大学がオッペンハイマーにすら認めなかった50:50の任用を史上初めて認めてくれたのです。これは日本の科学研究にとって、またとない好機になったと思います。安心してすべてをまかせられます」と述べています。
 

大栗博司 新機構長は
「Kavli IPMU の二代目の機構長になることを光栄に思うとともに、身の引き締まる思いです。この研究所には私は設立された当時から主任研究者として参加しており、村山さんのリーダーシップの下で世界トップレベルの研究所に向けて成長し発展していく様子を間近で見てまいりました。基礎科学の研究においては、有能な研究者が自由な発想と長期的な視点に基づき集中して研究できる安定した環境が重要です。そのために、次の5年の間に恒久的な研究所としての Kavli IPMU の確固たる地位を確立し、世界中から最も有能な研究者が集まり続ける環境を提供することが、二代目の機構長の最も重要な役割だと考えています。Kavli IPMU が、村山さんのコメントにある『支援の三本柱』を受け続けることがふさわしい研究所であり続けるためには、研究において大きな成果をあげ、また若手研究者が世界のリーダーとなるよう育成し、更には研究所の組織改革を大学の中に広げて日本の大学がグローバルな競争力を持つことにも貢献していかなければなりません。そのために、研究者や事務職員を含むすべての構成員が最高の力を出し切れる環境を作り、その成果を支援をいただくパートナーや社会全体に伝えていくことも、私の任務と考えています」と述べています。
 

Kavli IPMU や村山初代機構長及び大栗新機構長へは、世界にある他のカブリ研究所関係者の方々から下記のようなコメントが寄せられています。

David Gross (ディビッド・グロス) 氏 (ノーベル物理学賞受賞者 / カリフォルニア大学サンタバーバラ校カブリ理論物理学研究所前所長)
「この10年という大変短い期間に、基礎物理学の分野において、Kavli IPMU は世界トップの研究所の一つとして広く認められるようになったと断言できます。」

Steven Kahn (スティーブン・カーン) 教授 (スタンフォード大学カブリ素粒子天文物理学・宇宙論研究所)
「Kavli IPMUを巣立った数多くの傑出した若い物理学者、天文学者、数学者は、世界中の著名な研究機関で素晴らしい業績をあげています。」

Michael Turner (マイケル・ターナー) 氏 (シカゴ大学カブリ宇宙物理学研究所所長)
「村山斉氏は、IPMU を世界をリードする研究所に作り上げることに成功し、6年前には我々カブリ研究所グループの一員となりました。日本が育て超弦理論研究の世界的指導者となった大栗博司氏の採用によって、Kavli IPMU はもうひとりのビジョナリーに引き継がれます。KIPAC はこれまで、村山氏や Kavli IPMU との協力関係から多大な恩恵を受けてきました。これから先、大栗氏とともに一緒に仕事をしていくことを楽しみにしています。」



3. 問い合わせ先
 (報道に関すること)
東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構
広報担当  小森 真里奈
TEL:04-7136-5977  E-mail:press_at_ipmu.jp
*_at_を@に変更してください


関連リンク

機構長就任挨拶
https://www.ipmu.jp/ja/place-and-people/history/2018InaugurationSpeech

大栗博司 氏のホームページ
http://ooguri.caltech.edu/japanese