カブリ財団 Robert Conn 会長の言葉


令和2年度「東京大学稷門賞」授賞式における カブリ財団 Robert Conn 会長の言葉
 

五神総長、藤井次期総長、受賞者の皆さま

カブリ財団を代表しまして、この度はありがとうございました!

カブリ財団そして代表である私に「稷門賞」をいただきまして、誠にありがとうございます。

古代中国の歴史における「稷門」の逸話は、素晴らしい歴史的なお話です。学者を大切にし、尊重することがいかに重要であるかを私たちに思い出させてくれます。

私達カブリ財団は、学者、我々の場合は科学の研究者を支援することの大切さを信じていますし、この行動が社会に良い影響を与えることを知っています。

この賞はまた、我々の行う社会奉仕活動の考え方、つまり社会自体に提供された機会を尊重し、社会を支援し還元するという考え方を称えていただいているものです。社会奉仕活動は、個人、企業、またはカブリ財団のように寄付によって設立された私的財団、私たちの場合は Fred Kavli 氏ですが、そうした団体等によって行われてきました。

カブリ財団は、2012年に日本で最初の一歩を踏み出しました。その際、東京大学にあった数物連携宇宙研究機構、すなわち現在のカブリ数物連携宇宙研究機構に対して、寄附を行い大幅な経済的支援を行うことに合意しました。

初期の IPMU で作られた研究所のコンセプトは、物理学、特に天体物理学や宇宙論の卓越性に焦点を当てたものであり、研究者が日本からだけでなく、世界中からも来ており世界的な研究所を実現するため独自の取り組みを行っている様子を私達は目の当たりにしました。

Kavli IPMU は、規模や領域において真に国際的であり、国境のない科学の顕著な例です。私達は、文化や制度的な違いが弱点ではなく長所となりうることを知り、長年にわたって Kavli IPMU から多くのことを学びました。

過去8年間で、東京大学とカブリ財団は、Kavli IPMU に対する追加の慈善支援に向け更なる進歩を遂げました。まず、私達カブリ財団は、数年前に追加の資金を提供することに同意しました。これは、文部科学省が Kavli IPMU の機構長に科学の進歩のため更に資金を提供することに同意した際、それに併せて行ったものです。

また最近の過去2年間では、五神総長と東京大学及びカブリ財団の両方のリーダシップに基づく協力により、驚くほど画期的で、ある意味文化を変えるような期間延長の合意に達しました。この新しい契約では、大学からの私的な基金とカブリ財団からの新しい基金が含まれています。科学を支える Kavli IPMU に対する基金の基盤は2倍以上になります。更に重要なことは、この合意は長期的なもので数十年にわたるものです。これにより、東京大学において世界的に有名な研究所である Kavli IPMU が今後数年間でとても強力な研究所となることが保証されます。

五神総長の賢明で革新的なリーダーシップに特別な「ありがとう」を表明させていただきます。そして、東京大学のチームの皆さんのリーダーシップとアイディアに感謝したいと思います。こんな創造的で思慮深い指導者の方と一緒に仕事をすることは私にとって喜びでした。

そして、Kavli IPMU の並外れた能力を持った機構長がいなければ、この全てを達成することはできませんでした。初代機構長であり、優れた指導者で研究者でもある村山斉教授に感謝いたします。そして、彼の最も有能な後継者であり、世界をリードする理論物理学者の一人である大栗博司 現機構長に感謝します。彼らの類いまれなリーダーシップがなければ、これまで起きてきたことは、何も実現しなかったでしょう。

そして最後に、次期総長の藤井教授に感謝いたします。藤井教授はこの2年間、東京大学と財団との話し合いの鍵を握ってきました。今後も彼と一緒に仕事ができることを楽しみにしています。

アメリカの偉大なビジネスマンの一人であり、おそらく我々にとって最も有名な慈善家である Andrew Carnegie (アンドリュー・カーネギー) は、「余剰の富は、その持ち主が社会の利益のために生涯管理することを義務付けられた厳粛な信託なのだ」と述べています。これを言い換えれば、富を生み出すことは善良で名誉なことであり、その富を社会に還元することは高潔なことです。2010年に始まった Bill Gates 氏と Warren Buffett 氏が始めた慈善活動も、Carnegie 氏の伝統と Fred Kavli 氏の伝統と本質的に同じ考えに基づくものです。

繰り返しになりますが、カブリ財団を代表して、この素晴らしい栄誉を頂きましたこと感謝いたします。