「XENON 実験について知りたい!」で当日頂いたご質問への回答です (※当日回答できなかったご質問への回答を含みます)
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講演1. (Kai 先生の講演内容に対して)
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Q1-1. Do most other dark matter experiments also use Xenon? How many similar experiments are there in the world? (他のほとんどの暗黒物質探索の実験もキセノンをつかっていますか？類似の実験は世界中にどのくらいありますか？)
A1-1. キセノンを使う進行中の計画は XENON 実験、LZ 実験、PANDA-X 実験があります。他には液体アルゴンを用いた実験や、半導体を用いた実験等があります。計画中、建設中などを含めるとたくさんの実験があり正確にはわかりませんが、暗黒物質直接探索の実験はおおよそ30-40程度あるのではないでしょうか。
Q1-2. I think it's difficult situation now (covid). Is your experiment continuing now? (コロナ禍の影響があるかと思います。実験は今も続けられていますか？)
A1-2. 今年の春頃にはコロナの影響が強くありました。夏あたりに改善してきましたので、すすめる事ができるようになりました。現在実験準備中です。
Q1-3. Does WIMP have interaction in 'weak' force or 'strong' but not in EM ? (WIMP 相互作用は弱い力や強い力を持ちますか？電磁相互作用は持ちませんね？)
A1-3. WIMP はいわゆる「弱い相互作用」に近い程度の弱い相互作用をするものと思われています。強い相互作用があれば直ぐに発見されるはずですので、強い相互作用はしないと思われます。電磁相互作用についても同様です。
Q1-4. WIMP の質量はどのぐらいですか？ その質量で宇宙に存在する物質の85パーセントを証明できますか？ 有意水準は現在どのぐらいの値で、その値はノイズではないといえる値ですか？(How much is the mass of WIMP？ Is the WIMP mass possible to prove 85% of matter in the Universe? What is the current level of significance? Could researcher say that its value is not noise?)
A1-4. WIMPの質量はわかっていません。ただ狭い意味での WIMP は、陽子の質量の10倍から1,000倍程度あたりにあるのではないかと期待されています。こういった質量で、暗黒物質としての適切な強さの相互作用があれば、宇宙に存在する物質のうちの85%を占めることができます。ただしWIMPが暗黒物質である有意な証拠はいまのところありません。
Q1-5. In the figure of History of the Universe , which is big-bang ,time o white explosion or yellow explosion between 10**(-32) and 1μs？ (宇宙の歴史の図において、ビッグバンは白い爆発の部分なのか、10**(-32)秒から1マイクロ秒の間なのかどちらでしょうか?)
A1-5. ビッグバンとの言葉は少し曖昧です。インフレーションをした時期を指す場合もあるようですし、インフレーションの後に物質が作られ高温になった状況を指す場合があります。一般的にはこの図の10**(-32)sの後、高温の宇宙が発生した状況のことを指すのではないでしょうか。
Q1-6. 基本的な質問で申し訳ありませんが、ダークマターは地球のまわり、自分たちのすぐ近くに存在しているのでしょうか。近くに存在していないとしたら、検出器の精度をいくら上げても検出できないような気がしますが。(Does dark matter exist around us, in particular around the earth? If there is no dark matter around us, I think we can’t' detect dark matter even though researchers raise the precision of detector.)
A1-6. 答えはわかっていません。塊のようになっているという可能性もありますがその証拠もありません。現在のところは銀河の回転曲線から推測される分布がなめらかに続いていると仮定して研究を行っています。直接検出では地球の周りになければ検出できませんが、宇宙のどこかで暗黒物質が対消滅する信号を観測しようとする間接検出という手法があり研究が進められていますので、そういったやりかたで発見が進めば、将来答えがはっきりするかもしれません。
Q1-7. カイ先生と森山先生に質問です！ Although it seems that axion is still born in the sun, when axion begin to be made in the Universe? Is the same time as WIMP? つたない英語ですみません！ (アクシオンは太陽で生まれているようですが、宇宙ではいつアクシオンが生まれ始めたのでしょうか。WIMPと同じ時期でしょうか？)
A1-7. アクシオンが暗黒物質だとすると、WIMPと同じように宇宙初期に主として生成されたと思われています。ただしインフレーションより前か後か等、詳しいことはわかっていません。
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講演2. (森山先生の講演内容に対して)
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Q2-1. 今回の実験および予定されている XENONnT により、ダークマターの何%くらい（あるいはほぼ全て）がアクシオンであるというデータがどの程度の精度で取得出来そうですか？ XENONnT は何年間くらいの実験を予定していますか？
A2-1. 標準的に言われているようにアクシオンが冷たいダークマターを構成していると想定する場合には、XENON グループの検出器では検出することは難しいです。XENONnT ではダークマターの候補の中でも主として WIMP と呼ばれる未知粒子を探索します。5年間の観測を予定しています。
Q2-2. XENON1T 検出器の底面と上面で光センサーの並べ方が違うように見えたのですが、理由があるのでしょうか?
A2-2. 液体キセノンから気体キセノンに光が出るのは屈折率の違いから難しいため、ダークマターがぶつかった瞬間に発光する光は液体中、すなわち底面にある光センサーで観測します。底面のどこの玉に光が入るかはそれほど重要でないため、配置への条件は強くありません。一方、上面の光センサーは、気体キセノンに取り出した電子が発する比例蛍光を観測し、比例蛍光の発光位置を特定しなくてはなりません。したがってより稠密で、間違って入ってくる光等を認識できる必要があります。そのためより注意深く、特に外縁部付近の少し広い領域を覆うようにデザインしています。
Q2-3. XENON 実験でスピン偏極は測定できるのでしょうか? また巻き付き数は、1回巻きがスピノル(S=1/2)を表すように、スピンの大きさに対応するのでしょうか?
A2-3. 私は今の所、暗黒物質のスピン偏極を調べようという提案は目にしたことがありません。原理的には可能かもしれません。また、暗黒物質にスピンがないと生じない現象はあるので、スピンの有無は将来議論できるようになるかもしれません。真空の巻き付き数は素粒子のスピンの大きさには関係ありません。
Q2-4. 暗黒物質は宇宙の初期に生成されたミニブラックホールの可能性はありませんか？ 他の仮想粒子を導入しなくても済むのでそう考えるが一番シンプルな気もするのですがいかがでしょうか？ アクシオンの存在は否定しませんが宇宙に存在する物質の85パーセントを説明するのはちょっと難しいように思いますが・・
A2-4. 原始ブラックホールが暗黒物質である可能性はまだ残されており、活発に研究が行われています。アクシオンが暗黒物質の100%を占めることも十分可能性があると思われています。
Q2-5. 巻付き数の大きさはどのぐらいですか？ 巻付き数が点状の素粒子や弦理論のひものような最初単位の形状ということですか？
A2-5. 宇宙の真空は、巻付き数がマイナス無限大からプラス無限大までの真空をずらしながら重ね合わせたものです。弦理論と直接関係はないように思います。
Q2-6. 今回発見されたと思われる太陽アクシオンの質量は、電子の２００分の一という事でしたが、そもそものアクシオンは、電子の質量の一兆分の一くらいだったと思います。太陽アクシオンとアクシオンは同じものですか？
A2-6. 今回発見されたかもしれない太陽アクシオンの質量は電子の質量の100万分の1から1万分の1程度の質量を持つ可能性があります。暗黒物質になる可能性のあるアクシオンは、電子の1億分の1よりも軽い、たとえばおっしゃるように１兆分の質量を持つ可能性が考えられています。アクシオンがいくつもある理論は作れるとは思いますが、一つあれば十分です。太陽アクシオンとはダークマターがアクシオンであるかとは無関係に、太陽で作られるアクシオンのことを呼んでいます。
Q2-7. XENON の読み方は 日本語では、ゼノン、キセノンがあるようですが、 使い分け方法はありますか。実験はゼノン、元素はキセノン？
A2-7. 私は日本人としゃべる時はキセノン、英語でしゃべる時はゼノンと発音しています。日本語でのキセノンとの言葉はドイツ語由来であると聞いたことがあります。英語ではゼノンと呼ぶようです。
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