Kavli IPMUに「データ駆動型探究センター」が開設

2023年3月24日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)

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(クレジット:Kavli IPMU)

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は、新たに設立される「データ駆動型探究センター」(Center for Data-Driven Discovery :CD3)が、データサイエンスと人工知能・機械学習(AI/ML)技術を駆使し、現在進行中の研究プロジェクトと連携しながら宇宙の理解を進めることになると、2月に発表しました。新しいセンターは4月1日に発足し、センター立ち上げのシンポジウムが4月19、20日の両日に行われます。

宇宙の謎を解明するための研究プロジェクトは年々大規模化し、そのデータ量も増加しています。そのため、世界中の大学や研究機関が、データサイエンスやAI/MLを応用した研究センターを新設し、データの解読や開発に取り組んでいます。

Kavli IPMU は、宇宙のマッピングを行う Hyper Suprime-Cam、その姉妹プロジェクトであり近々観測が開始される  Prime Focus Spectrograph、そして今後10年以内の打ち上げを目指している LiteBIRD 宇宙マイクロ波背景放射偏光観測衛星などの進行中のプロジェクトでの新たな発見をサポートするため、独自のセンターを設立します。
2007年の設立以来、Kavli IPMU が達成した共同研究や学際的研究を促進する環境を醸成すると言う成功に続き、CD3は基礎科学、データ科学、AI/ML、社会科学間のコラボレーションを促進します。また、科学における多様性と包括性の実現にも貢献します。


CD3所長のJia Liu(ジア・リウ)Kavli IPMU特任准教授は次のように語っています。
「CD3のミッションは『我々の宇宙を解読する』ことであり、我々のプログラミングコードを用いて、宇宙の基本的な物理法則を理解することです。CD3は、大量の受信データに対応するための切実なニーズに応えるものです。例えば、私たちの天文学グループは、数百万の銀河を扱うことに慣れていますが、すぐに数十億の銀河を扱うようになるでしょう。既存のツールでは、このような急激な増加には対応できないのです。このような障害は、素粒子物理学から宇宙論まで、Kavli IPMU内の複数の研究グループに存在します。CD3を通じて、私たちはデータサイエンスとAI/MLを日々の研究に統合したいという共通の願望によって、より緊密に結ばれるようになりました。
私は特に、新しい形の学習とお互いの交流を試すことに興奮しています。AI/MLの分野は日々爆発的な進歩を遂げていますが、通常の教科書を読むようなアプローチでは遅すぎるのです。今後開催される体験型ワークショップ、ディープラーニングの特訓コース、共同コーディングセッション、あるいは私たちが「hackathons:ハッカソン」と呼んでいるものに、Kavli IPMUメンバーが積極的に参加されることを強くお勧めします。データは楽しいもので、みんなで楽しく遊べればと思います!」

Kavli IPMU機構長の大栗博司教授は次のように述べています。
「私がこの研究所の所長に就任したとき、最初に行ったことのひとつが、今後10年間の長期戦略計画を策定することでした。2019年秋に完成した計画報告書では、『天体物理学・宇宙論科学は、データ集約型、計算機駆動型の時代に突入する』と指摘し、『これにより、新たな学際的機会が開かれる』と述べています。その上で、「(Kavli IPMUで今後行われる実験や観測の)データセットのデータ圧縮解析や物理解析を主導する解析センターを立ち上げる」ことを提言しています。
私は、CD3によってこの提言が現実のものとなることを嬉しく思っています。Kavli IPMUは、数学、物理学、天文学の学際的な交流や共同研究を促進してきた実績があり、私たちはそれを基に、データサイエンスを含む共同研究のネットワークを広げていくつもりです。このようなコラボレーションは、Kavli IPMUの基礎科学だけでなく、データサイエンスにも利益をもたらすと信じています。CD3は、そのようなコラボレーションを促進する上で重要な役割を果たすでしょう。
この新しいセンターを立ち上げたJia氏のリーダーシップに感銘を受けており、その発展を楽しみにしています」
  Hyper Suprime-Cam銀河サーベイ、Prime Focus Spectrographプロジェクト、LiteBIRD、スーパーカミオカンデ、ハイパーカミオカンデ、素粒子物理Belle-IIコラボレーションなど、いくつかの大規模プロジェクトがすでにセンターに加わっています。」

Kavli IPMUの現職研究者をメンバーに迎えており、センター自身も男女の研究者参加率50/50を目標に掲げています。CD3は、東京大学柏キャンパスのKavli IPMU内に設置され、4月19日、20日にオープニングシンポジウムが開催されます。

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CD3所長のJia Liu(ジア・リウ)(クレジット:Kavli IPMU)
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(Credit: Kavli IPMU)
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(Credit: Kavli IPMU)
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(Credit: Kavli IPMU)
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(Credit: Kavli IPMU)

 

関連リンク
「データ駆動型探究センター」のウェブサイト
「データ駆動型探究センター」について(ビデオ)
CD3シンポジウム(4月19日~20日)
 

2.問い合わせ先
(研究内容について) 
[英語での対応]
ジア・リウ
「データ駆動型探究センター」 (CD3)所長
カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)特任准教授
電子メール:jia.liu_at_ipmu.jp
* at_を@に変えてください。

(報道に関する連絡先)
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 広報担当 千葉 光史
E-mail:press_at_ipmu.jp
*_at_を@に変更してください
TEL: 04-7136-5977 / 080-4056-2930