2025年2月26日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU, WPI)

京都⼤学⼤学院理学研究科助教で東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU, WPI) 客員准科学研究員の桂川美穂 (かつらがわ みほ) 氏が第6回となる2025年の米沢富美子記念賞の受賞者の一人に選ばれました。
米沢富美子記念賞は、不規則系の物性理論研究者として世界的な業績を挙げるとともに、女性研究者支援活動にも熱心に取り組むなど女性物理学者の先駆者として名高い米沢富美子氏の功績を讃えて、2019年に日本物理学会が設立した賞です。女性会員の物理学分野における活動を称え、奨励することを目的としています。2025年9月開催の日本物理学会年会大会の場で授賞式が行われる予定です。
今回の受賞理由は「宇宙硬X線観測技術にもとづく分野横断的研究と加速器実験への展開」で、宇宙の高エネルギー現象を硬X線で観測するため開発されたテルル化カドミウム (CdTe) 半導体検出器の技術を応用し、負ミュオンビームを用いた非破壊元素分析技術の精度向上や、生体内のがん細胞に取り込まれた複数の放射線核種プローブを正確かつ同時に画像化する新技術の開発などに貢献してきた功績が評価されました。CdTe 半導体検出器は、硬X線と呼ばれる高いエネルギーのX線を高感度に検出することができ、エネルギー分解能にも優れています。また、光学系と組み合わせることでX線が到来してきた方向を知ることができます。桂川氏は CdTe 半導体検出器を目的にあわせ改良することに貢献したほか、天体観測用のスペクトル解析手法を異分野へ適用するにあたり大きな役割を果たし、CdTe 半導体検出器の持つ優れた特性を活かした測定を異分野においても可能とする道筋を拓きました。
桂川氏は、所属していた高橋忠幸研究室が Kavli IPMU へ移転したことに伴い、2018年から博士課程の大学院生として Kavli IPMU での研究を開始し、博士号取得後の2019年4月から2024年3月まで Kavli IPMU 特任研究員として研究活動を行ってきました。研究室が2018年から2020年にわたって新学術領域研究「宇宙観測検出器と量子ビームの出会い。新たな応用への架け橋。」の一環として、 CdTe 半導体検出器を用いたイメージャをミュオン実験や医学研究に展開する中で、桂川氏はその活動の中心メンバーとして活躍してきた実績を持ちます。そして2024年4月から京都大学へと移り、現在は Kavli IPMU には客員准科学研究員として所属しています。
受賞にあたり桂川氏は、「このたびはこのような栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。本受賞は、決して私一人の力によるものではなく、Kavli IPMU の 高橋忠幸特任教授や武田伸一郎特任助教をはじめとする周りの皆様のご支援とご協力の賜物です。Kavli IPMU のサポート体制も素晴らしく、研究に集中して取り組むことができました。心より感謝申し上げます。今後も様々な課題解決に向けて、より一層精進してまいります」と述べています。
関連リンク
第6回(2025年)米沢富美子記念賞受賞者一覧/受賞理由詳細
宇宙を見る目で「がん」を捉える ―異分野の壁を超えるイメージング技術―(Kavli IPMU後編)
宇宙観測検出器と量子ビームの出会い。新たな応用への架け橋。(文部科学省 科学研究費助成事業 新学術領域研究)
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