2024年12月18日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)
2025年1月25日、第10回目となる東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)と東京科学大学地球生命研究所(ELSI)との合同一般講演会「起源への問い」を開催いたします。昨年に引き続きまして、同じく東京大学のニューロインテリジェンス国際研究機構(IRCN)とも共催です。
宇宙・地球・知性..その起こりはどのようなものだったのでしょう。私たちは歴史のなかで、たえずこの問いに向き合ってきました。
本講演会では幾何学・生命・天体ついて、その最先端のサイエンスをわかりやすくお話しするとともに、異なる領域で起源に迫る3名のサイエンティストの対話を、まだ現在のようには学問が分化していない中世の哲学の研究者がモデレートします。
プログラム
13:10-13:45
講演1
幾何学、そして座標の誕生
講師:伊藤由佳理(Kavli IPMU 教授)
幾何学は英語でgeometryといい、地球(geo)を測る手法(metry)である。ユークリッド幾何学は、古代エジプトでナイル川の洪水の度に必要とされた測量の技術として生まれた。その後「我思う、ゆえに我あり」という言葉で有名な哲学者デカルトが幾何学に座標を導入し、形や大きさだけでなく、位置関係も記述できるようになった。現在も、この概念は数学だけでなく、物理や工学などに欠かせないものとなっている。この講演ではこれらの歴史から現代数学のひとつである代数幾何学について紹介したい。また数学を中学・高等学校で学ぶ意義や、現代社会における数学の役割についても触れたい。
13:45-14:20
講演2
「生命力」の起源を顕微鏡で探る
講師:岡田康志(IRCN 教授)
タンパク質などの生体高分子の集合体である細胞が生きているとはどういうことなのだろうか?
水分子の集合体が、冷却すると氷になり、加熱すると水蒸気になるような状態変化として、細胞の生と死を理解することはできるのだろうか。細胞質のタンパク質濃度は約30%であり、満員電車なみの混雑環境であると言われている。そのような混雑環境での化学反応は、試験管内の希薄溶液系での化学反応とは異なる可能性が指摘されている。特に近年、細胞内で特定のタンパク質などが濃縮した液滴が形成されることが注目を集めている。私たちは、光学顕微鏡の限界を超えて、分子を直接観察する顕微鏡技術を開発し、生きた細胞の中での計測を進めてきた。本講演では、こうして開発してきた顕微鏡で得られた細胞の画像を紹介しながら、「生命力」の起源について議論したい。
14:30-15:05
講演3
地球外生命から生命の起源、普遍生物学へ
講師:井田茂(ELSI 教授)
数千もの多彩な姿の惑星系が発見され、銀河系の星々が地球型惑星を持つ確率は50%以上だ。海を持つ惑星も多数存在しそうだが、現在観測可能なのは赤色矮星をめぐる地球とはかけ離れた姿の惑星たち。一方で太陽系内の木星や土星の氷衛星の内部海やメタンの海にも生命がいる可能性がある。今後、太陽系外の惑星を観測する宇宙望遠鏡や外惑星の氷衛星に向かう探査機が次々と打ち上げられ、地球外生命の何らかの情報が近いうちに得られる可能性がある。しかし、天体と生命は一体なので、系外惑星や氷衛星にどんな生命が存在し得るのか、そもそも生命とは何かという問題が突きつけられている。こんな状況の中、科学者たちが何を考えているのかを紹介する。
15:05-15:40
講演4
無限性を宿す生成の原理としての普遍―中世におけるミクロとマクロ
講師:山内 志朗(慶應義塾大学名誉教授)
中世は宇宙の生成、神の定義、生命の原理、人間個体化の問題、知識の問題が融合して語られていた。1200年頃に書かれた「24人の哲学者の書」は、24の神の定義を並べたものである。中世ヨーロッパに広く流通した文書だった。この書は、大きな影響を及ぼし近世初期の宇宙論に対して思弁的に想像的に大きな刺激を与えた。最も有名なのは、定義2で、「神とは無限の球体であり、その中心は至るところにあり、その表面はどこにもない」というものだ。存在や普遍という抽象的なものが、様々なものに分化展開していく様子を紹介したい。
15:40-16:30
座談会:
異なる領域で起源に迫る3名のサイエンティストの対話をまだ現在のようには学問が分化していない中世の哲学の研究者がモデレートします。
16:40-17:10
ティータイム(配信なし):
講師を囲んでのティータイムを行います。ざっくばらんに様々なこと、聞いてみませんか。
概要
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会場参加:170名 |
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Kavli IPMU ×(かける)コレクション とは
基礎科学/純粋科学に分類されるKavli IPMUの研究者と他分野の専門家との交流を試みるシリーズです。これまでのイベントはこちら。