第4回戸塚洋二賞 --井上邦雄主任研究員--

2013年4月2日
東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)

東北大学理学系研究科教授・同ニュートリノ科学研究センター長で、Kavli IPMU主任研究員の井上邦雄氏が、高エネルギー加速器研究機構(KEK)機構長の鈴木厚人氏とともに、第4回戸塚洋二賞を授賞しました。授賞式は3月20日(水)、東京大学小柴ホールで行われました。

「戸塚洋二賞」は、平成基礎科学財団(理事長:小柴昌俊東京大学特別栄誉教授)がニュートリノ実験または非加速器素粒子実験、あるいは関連する理論研究において優れた功績をあげた研究者に対して授与するものです。

受賞対象:「液体シンチレータを用いたニュートリノ研究、特に地球反ニュ-トリノの観測」

授賞理由:

鈴木厚人氏は1990年代に神岡に1000ト ンの液体シンチレータを用いた測定器(カムランド)を建設し、日本中の原子炉で生成される反電子ニュートリノを観測して、太陽ニュートリノ問題の解明と ニュートリノ振動の研究を行うことを提案しました。それと共に鈴木氏は地球内部のウランやトリウムの崩壊起源の反電子ニュートリノを同じ測定器で観測でき る可能性を示しました。井上邦雄氏はカムランド実験に1998年より参加し、当時の研究代表者である鈴木厚人氏のもとで反電子ニュートリノの研究を始めました。2006年に鈴木氏がKEK機構長として転出した後はカムランドの代表として更に研究を進めました。
両氏の努力の結果、原子炉から放出される反電子ニュートリノのエネルギーに依存した欠損を明確に観測し、電子ニュートリノの振動の確定に非常に大きな貢献をし、ニュートリノ振動パラメータを精密決定しました。
2005年に地球反電子ニュートリノ観測の兆候を報告後、測定器内のバックグラウンドを徹底的に理解し、2011年に地球内部のウランやトリウムの崩壊起源の反電子ニュートリノをカムランドで観測し、地表の熱流量44兆ワットに対し、地球内部での放射性熱生成が24±9 兆ワットであると初めて測 定しました。これが44兆ワット以下であることから,熱の起源が放射能だけではなく地球創成時の原始の熱が残っていることを初めて示しました。この研究 は、いわば「ニュートリノ地球物理学」の研究分野を創設したと言えます。これらの成果は、基礎科学にとって非常に重要な成果です。