Kavli IPMU、宇宙マイクロ波背景放射観測プロジェクトPOLARBEARに参加

2013年4月26日
東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU) は2013年4月、チリ・アタカマ高原で観測が進められている国際共同実験プロジェクトPOLARBEARコラボレーションに加わりました。

POLARBEARは宇宙マイクロ波背景放射(CMB:Cosmic Microwave Background)の偏光観測を行う国際共同プロジェクトで、日本の他にアメリカ、カナダ、イギリス、フランスの5か国の大学、研究機関が参加しており、Kavli IPMUは高エネルギー加速器研究機構(KEK)に続く日本からの参加機関として、POLARBEAR実験およびその次期計画POLARBEAR-2実験に参加します。

POLARBEAR実験の観測対象であるCMBは138億年といわれる宇宙の歴史の極初期、宇宙誕生からわずか38万年後の宇宙の晴れ上がりの時期に放たれた光であり、その観測は宇宙の始まりを解き明かす重要な鍵になっています。これまでにもCMBの温度の揺らぎを非常に精度よく測ることで、宇宙論に関する進展がもたらされてきましたが、最近では偏光成分の観測に注目が集まっています。

特にCMBの「Bモード」と呼ばれる特殊な渦状の偏光のパターンは、宇宙誕生時に宇宙が指数関数的に膨張したとする理論(インフレーション理論)から予言される「原始の重力波」の痕跡を残していると考えられており、その観測は温度の揺らぎのみでは明かされることのなかった宇宙のさらなる初期を探る新たな手段になると期待されています。

しかしながら、CMBのBモード偏光の成分は温度の揺らぎよりも遥かに弱い信号のため、これまでの実験では発見されていません。POLARBEAR実験では超伝導技術を用いた1000を超える素子の光検出器を用いて、これまでにない高感度での偏光観測を実現することにより、宇宙の始まりを解き明かそうとしています。

Kavli IPMUは同実験において、偏光観測での装置の較正を始めとするデータ解析の中心的な役割を担い、実験の進展に大きく貢献することが期待されています。

Kavli IPMUの副機構長であり、Kavli IPMUの同実験グループを率いる片山伸彦教授は、「Kavli IPMUはSuMIReプロジェクトで現在の宇宙の加速膨張の研究を主導しています。今回POLARBEAR実験に参加する事で、インフレーション期の加速膨張も研究する事が出来、ようやく車の両輪がそろった感じがします。」と語っています。

KEKで同実験グループを率いる羽澄昌史 KEK素粒子原子核研究所教授は、「Kavli IPMUが新たにPOLARBEARプロジェクトに参加することを、とてもうれしく思います。KEKとKavli IPMUが密接に連携して研究を進める事が、POLARBEARプロジェクトを成功させるための鍵となります。」 とコメントを寄せています。

POLARBEAR実験代表者の Adrian Lee カリフォルニア大学バークレー校教授は、「Kavli IPMUがPOLARBEARのコラボレーションに加わったことを、我々全員が大変うれしく思っています。Kavli IPMUの参加は、プロジェクト全体を成功に導くのに大変重要です。」と述べています。


POLARBEAR実験で用いる望遠鏡 Huan Tran TelescopePOLARBEAR実験で用いる望遠鏡 Huan Tran Telescope

Kavli IPMU POLARBEAR 実験グループ

片山 伸彦 副機構長・教授
西野 玄記 特任研究員

参考リンク

POLARBEAR ホームページ(英語)
KEK-CMB POLARBEARグループ ホームページ