J-PARC ニュートリノビームグループが2013年度諏訪賞を受賞

2014年2月25日
東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)

カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) のマーク・ハーツ特任助教を含む J-PARCニュートリノビームグループ(代表:小林隆 高エネルギー加速器研究機構教授)は、T2K実験における「世界最高強度ニュートリノビーム施設の実現による電子ニュートリノ出現現象発見への貢献」により、2013年諏訪賞を受賞しました。諏訪賞は、公益財団法人高エネルギー加速器科学研究奨励会により、高エネルギー加速器科学の発展上、長期にわたる貢献など特に顕著な業績があったと認められる研究者・技術者・研究グループに授与されます。

授賞式は2月17日、東京都内で執り行われました。諏訪賞の受賞に際し、ニュートリノビームグループにおいてニュートリノを生成するための陽子ビームを監視するオプティカル・トランジション・モニターの建設、設定、運用を担当した他、ニュートリノビームラインによって生成されるニュートリノの強度を計算するための物理モデルの作成を率いたハーツ特任助教は、「これまでの5年以上にわたるJ-PARCのニュートリノビームグループのメンバーとしての共同研究は大変有意義でした。このグループは強力な国際協調でサイエンスの目標に向かって取り組み、困難な仕事を成し遂げたよい例を作りました。諏訪賞を受賞したJ-PARCニュートリノグループの成果に私も貢献できた事を誇りに思います。」と述べています。

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授賞式会場にてニュートリノビームグループのメンバーと。左から、カナダ・トロント大学のジョン・マーティン教授、英国・ラザフォード研究所のクリス・デンシャム博士、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の小林隆教授、カナダ・ヨーク大学のサンパ・バードラ教授、Kavli IPMUのマーク・ハーツ特任助教、京都大学の市川温子准教授。
授賞式会場にてニュートリノビームグループのメンバーと。左から、カナダ・トロント大学のジョン・マーティン教授、英国・ラザフォード研究所のクリス・デンシャム博士、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の小林隆教授、カナダ・ヨーク大学のサンパ・バードラ教授、Kavli IPMUのマーク・ハーツ特任助教、京都大学の市川温子准教授。


T2K (Tokai to Kamioka) 実験は茨城県東海村のJ-PARCで生成したニュートリノを約300km離れた岐阜県飛騨市神岡町のスーパーカミオカンデで観測して行っている長基線ニュートリノ振動実験。ニュートリノは物質とほとんど相互作用せず通り抜けてしまう事から検出が非常に難しい素粒子で、電子型、ミュー型、タウ型の3種類がある。T2K実験グループはミュー型ニュートリノから電子型ニュートリノへの振動現象の探索を行い、2011年6月に世界で初めてその実験的な証拠を得たと発表した。また実験の進行に伴い、ミュー型からタウ型の振動の探索結果や、電子型への振動探索のより進んだ結果などを続けて発表している。 http://t2k-experiment.org/ja/

J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex; 大強度陽子加速器施設)は、素粒子物理、原子核物理、物質科学、生命科学、原子力など幅広い分野の最先端研究を行うための陽子加速器群と実験施設群の呼称。世界に開かれた多目的利用施設であるJ-PARCの最大の特徴は、世界最高クラスの陽子 (1MW) ビームで生成する中性子、ミュオン、K中間子、ニュートリノなどの多彩な2次粒子ビーム利用にある。高エネルギー加速器研究機構 (KEK) と日本原子力研究所 (原研) 【現 (独) 日本原子力研究開発機構 (JAEA) 】が共同で提案し、8年の歳月と総工費1524億円をかけ、2008年にJAEA東海の原子力科学研究所内に第一期施設が完成した。http://j-parc.jp/index.html