天の川銀河の星の元素組成で探る宇宙初代の巨大質量星の痕跡

2014年8月22日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)

初代の巨大質量星の爆発の想像図(クレジット:国立天文台)初代の巨大質量星の爆発の想像図(クレジット:国立天文台)

国立天文台、甲南大学、兵庫県立大学、および米国のノートルダム大学とニューメキシコ州立大学の研究者からなる研究チームは、すばる望遠鏡を用いて天の川銀河内にこれまで知られていない特異な元素組成を持つ星を発見しました。この星の特異な組成は巨大質量の初代星によってつくられた可能性があり、今回の観測結果は宇宙初期における巨大質量星の進化と元素合成について手がかりを得る上で、新たな知見をもたらしそうです。研究チームの一人、甲南大学の冨永望(とみながのぞむ)准教授はKavli IPMUの客員科学研究員でもあります。

今回発見されたSDSS J0018-0939という星は、天の川銀河系内のくじら座の方向にある我々から1000光年離れた太陽の半分程度の質量の小さな星です。ビッグバン後の宇宙初期には、重い元素はほとんどなかったため、初代星は水素やヘリウムのガス雲から生まれたと考えられています。SDSS J0018-0939は重元素の組成が極端に低いことから、初代星の影響を受けた第二世代の星だと考えられています。

初代星については、近年の計算機シミュレーションの結果によれば、太陽の数十倍の質量の星が多く出来たとされていますが、一部は太陽100倍を超える質量の巨大な星であったと予想されています。

しかし、従来の観測では太陽の数十倍の質量の初代星の存在を示す第二世代の星は相次いで発見されてきたものの、太陽の100倍を超える質量の巨大な初代星の存在を示す第二世代の星は見つかっていませんでした。

SDSS J0018-0939の鉄の組成は太陽の約300分の1と、最近みつかってきている第二世代の星に比べるとさほど低くありませんが、鉄族以外の元素が鉄に比べて軒並み少ないという、特異な元素組成を持つことが分かりました。この特徴により、巨大質量の初代星の影響を受けたこと、すなわち、巨大質量の初代星が宇宙初期に存在していた可能性が高まりました。これは、近年のシミュレーション結果を強く支持するものです。

今後、巨大質量の初代星の存在が確定的になれば、宇宙初期の星形成や銀河形成の研究、さらには理論の面でも研究が活発化していくことが期待されています。
 

この研究成果は2014年8月22日発行の米国科学雑誌Scienceに掲載されます。
  タイトル: A chemical signature of first-generation very-massive stars
  著者:W. Aoki, N. Tominaga, T. C. Beers, S. Honda, Y. S. Lee
  DOI: 10.1126/science.1252633

詳しくは国立天文台のプレスリリースをご覧下さい。