第5回(平成20年度)日本学術振興会賞受賞 --井上邦雄主任研究員--

授賞理由は以下の通りです。

 

「原子炉を用いたニュートリノ振動の精密測定」

(Precision Measurement of Reactor Neutrino Oscillations)

 

ニュートリノには電子ニュートリノ、ミューオンニュートリノ、タウニュートリノの3種類が存在し、これらが互いに移り変わる現象はニュートリノ振動と呼ばれる。またそれぞれのニュートリノにはその反粒子である反ニュートリノが存在する。

井上邦雄氏は、発電用原子炉で生成される反電子ニュートリノを測定するカムランド計画を現場で主導し、ニュートリノの数がニュートリノのエネルギーと共に増減することを、世界で初めて実証した。これは、超新星からのニュートリノ観測に成功した岐阜県神岡町のカミオカンデ施設の水タンクの中に、低エネルギーニュートリノに感度の高い液体シンチレータを大きな袋に詰めて沈め、種々の放射線バックグラウンドを極限まで抑えたカムランド施設を建設する事によって初めて可能となった。この研究により、ニュートリノ振動の周期からニュートリノの質量差を世界最高精度で決定した。

この成果は、素粒子の基本的性質の理解を大きく進めるものである。同氏は、カムランドを用いて、地球内部から発生するニュートリノの観測を行うなどの新しい分野の開拓にも精力的に取り組んでおり、更なる活躍が期待される。

日本学術振興会より転載
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