Maria Mylova 特任研究員が2025年の Buchalter Cosmology Prize を受賞

2026年1月15日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU, WPI)

 

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Maria Mylova 特任研究員 (Credit:Kavli IPMU)

2026年1月8日、米国天文学会247回総会において東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU, WPI) の Maria Mylova (マリア ミロバ) 特任研究員が2025年の Buchalter Cosmology Prize の第2位の賞を受賞したことが発表されました。
 

Buchalter Cosmology Prize は、天体物理学者から実業家へ転身した Ari Buchalter (アリ バカルター) 氏によって2014年に創設された賞で、第1位から第3位までの賞があります。現在の標準宇宙論モデルを超えて、宇宙の起源や構造、進化に対する理解に画期的な進歩をもたらす可能性のある新しいアイディアや発見が対象となります。
 

今回の Mylova 特任研究員の受賞は、査読前論文サーバーの arXiv に発表した論文 "A Minimal Axio-dilaton Dark Sector" における研究成果が評価されたものです。この論文は、アインシュタインの重力理論を拡張し、極めて軽いスカラー場の存在を予測する研究です。 Mylova 特任研究員と共同研究者達は、基礎理論から自然に生じる極小アクシオンとディラトンの枠組みに着目し、アクシオンはコヒーレント振動によりダークマターとして振る舞い、一方でディラトンは宇宙の加速を駆動する動的なダークエネルギーとして振る舞うことで、この極小アクシオンとディラトンの枠組みによりダークマターとダークエネルギーの両方を説明できる可能性を示しました。さらに、この理論モデルの重要な特徴は、2つの場の間に運動学的な相互作用があることであり、これはダークマターとダークエネルギーが独立した存在ではなく、本質的に結びついていることを示唆しています。
 

Mylova 特任研究員は今回の受賞について以下のように述べています。
「この度は、このような栄誉を頂き大変光栄です。Buchalter Cosmology Prize は、基礎理論と観測的宇宙論を結びつけることを目指す研究を表彰するもので、まさにそれが本研究の背景となる動機でした。こうした研究の方向性が研究コミュニティに広く共感頂いていることを嬉しく感じると同時に、論文で展開したアイディアが、宇宙のダークセクターを理解する上で意義ある貢献と認められたことを喜ばしく思っております。」

すでに、Mylova 特任研究員は共同研究者とこの論文の次の段階の研究に取り組んでおり、理論モデルを完全に観測で検証できるものへと発展させています。最終的には、宇宙マイクロ波背景放射 (CMB) と宇宙大規模構造 (LSS) の観測により検証可能な痕跡を特定することを目指しています。
 

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図.(上段左と上段右)強結合アクシオン-ディラトンモデルにおける背景エネルギー密度とスケール因子aとの関係(上段左:絶対値、上段右:割合)。宇宙は放射(赤線)から物質(青線:アクシオンダークマター、緑線:バリオン)へ、そして今日のディラトンダークエネルギー(オレンジ線)へと移行する。特徴的なのは、a∼10^−1付近におけるディラトン密度の前加速時のバンプであり、これは宇宙の膨張率を一時的に加速させ、構造成長や CMB/LSS パワースペクトルに痕跡を残し得る。(下段右)ディラトン密度の前加速バンプにより、宇宙の進化に伴って全ての粒子の質量が振動する。(下段左)これらのモデルにおいて天体を観測した際に観測可能な "パワー" の偏差。望遠鏡が何か検出しようとする場合に、どの角度スケールを観測すべきかを示している。(Credit:Smith et al.)

 

関連リンク
AAS Names Recipients of 2025 Awards & Prizes (米国天文学会の記事)
A Minimal Axio-dilaton Dark Sector (arXiv.orgのページ)

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