Profile 05 Feng Luo (フォン・ルオ)

 


名前: Feng Luo (フォン・ルオ):理論物理学
出身地:中国河北省宣化
「北京から内陸に車で3時間ほどの場所です。」
職位: Kavli IPMU 特任研究員
おすすめの書籍: “Remembrance of Earth's Past”   著:Cixin Liu 
「中国人作家の Cixin Liu の著作で、3部作構成のサイエンスフィクションです。中国人読者は、1部作目のタイトルである "The Three Body Problem" を使って、この一連の著作に言及することが一般的です。」
日本で好きな場所:100円ショップ
「必要なものは何でも揃いますし、適切な価格で必要になりそうな新商品を試してみることができます。」


フォンさんは2015年の11月に来られましたが、Kavli IPMU で働いていて気に入っていることは何でしょうか?

Kavli IPMU は私が研究するにあたり大変素晴らしい場所だと思っています。私の研究分野は天体素粒子物理学です。天体素粒子物理学は、素粒子物理学と天体物理学、宇宙論との間を繋ぐ分野です。ここには、物理学者、天文学者、数学者が同じ建物にいます。そのため、例えば何か思いついたことがあったら、天文学者を見つけてすぐに議論を始めることができます。

それに私の妻はドイツで数学者をしているのですが、Kavli IPMU には彼女がここで議論したり共に研究を行えるような数学者が沢山おり、その点でもとても良い環境です。


現在のご研究について教えてください。

私の主な仕事は理論でのダークマターの研究です。重力の効果からでしかダークマターについては分からず、素粒子物理の面から言うと、そもそもどんな粒子なのかが分かっていません。ですので、それについて研究するのが私の仕事です。

私がダークマター研究で用いている主な素粒子物理学の枠組みは、超対称性と呼ばれるものです。超対称性は、素粒子物理学を次の段階に進める最も有力な候補の一つです。私が超対称性のダークマターについて研究している理由は、超対称性という枠組みが美しく、実験で検証可能なものだからです。大型ハドロン衝突型加速器の LHC では、超対称性粒子を探しているところですし、地下実験や衛星、地上での宇宙線検出実験を含む多くのダークマター探索実験が行われています。私たちは超対称性理論を検証する手立てを沢山持っているのです。


そうは言いますが、次の20年でダークマターを検出できるでしょうか?

残念ながらその保証はありません。しかし、継続的に理論を構築していくには実験は不可欠ですし、最終的にはダークマターを見つけられるはずです。

例えば20年前に人々は、 LHC 稼働の後、すぐに超対称性ダークマターは見つかると高い期待を寄せていました。しかし、実際はまだ見つかっていません。私たちは、ダークマターが理論的にどこにどのようにして隠れてしまっているのかを再考し、検討しなければなりません。

私の仕事の一つですが、シナリオの一つとして、超対称性ダークマター粒子の質量として最大限可能な値はおよそ8 TeV であることを発見しました。現在の衝突型加速器ではこの可能性を排除することはできませんが、100 TeV の衝突型加速器では可能かもしれません。100 TeV の衝突型加速器の稼働が現実となるには、おそらく更に20年以上はかかるかもしれません。ですが、まさに今、物理研究を行っていくためには必要です。一方で建設されない可能性もあるわけですが、それだと私たちは理論を構築していく機会を失ってしまうでしょう。そうやって今後の方向性を示していくのも現在の私の仕事の一つです。


研究活動の背景について教えてください。

大学3年生の時に、余剰次元や重力に関する講演を聞きに行って、面白いと思いました。それで、講演者と話をして、修士課程で彼の学生になりました。その後、博士号を取得するためにアメリカへ行くことに決め、ミネソタ大学へ行きました。ミネソタでの最初の年、私は後に指導教官となる方とお話ししたところ、試用期間にあたる時期にビッグバン元素合成とも関係する超対称性における問題をテーマとして与えられました。私はこの課題を気に入って、それが自分の研究テーマへと変わりました。

博士号を取得した後、2年間ポスドクとしてキングス・カレッジ・ロンドンへ行きました。そして、Kavli IPMU へ来る前に1年間 CERN で働いていました。


物理学者になりたいと思うようになったきっかけについて教えてください。

私は最初、物理学者になるつもりはありませんでした。中国で大学に入る前、私の目標は生物学コースに入ることでした。

小学生の頃、私は沢山のテーマが書かれた科学の本を持っていました。日常生活の科学、生物学、天文学、地球科学、人体の科学といったテーマが載ったものです。私はいつも天文学と生物学の部分を読んでいました。ところで、この本は日本語から翻訳された本で、それぞれの Q&A 部分に漫画が書かれているものでした。しかし、中国には天文学の専攻は多くなく、生物学の専攻の方がより沢山ありました。もしかしたら海の食べ物が好きだったからかもしれませんが、私は海岸沿いの大学に行きたかったのです。ともかくそういうわけで私の選ぶ大学の選択肢は限られていました。しかし残念なことに、試験の結果が思わしくなく私は生物学のコースに入ることができず、なんとか物理学コースに入れてもらえることになりました。そこで後になって、物理学の面白さに気づくことができたのです。

私のキャリアは、決して真っ直ぐな道のりではありませんでした。でも、私の研究している天体素粒子物理学は、好きな天文学と関係していますし、とても良いコンビネーションです。ここに生物学を含められたら、もっと幸せなのかもしれませんが、それは私にもまだ分かりません。きっといずれ分かる時が来るのでしょう。


研究内容はどこで拝見できますか?

下記の論文をご覧ください。
https://arxiv.org/find/hep-ph/1/au:+Luo_F/0/1/0/all/0/1