相原博昭

Hiroaki AiharaHiroaki Aihara

専門は素粒子物理学。米国スタンフォード線形加速器研究所 (SLAC)での陽電子電子衝突型実験で学位取得後、米国フェルミ研究所Tevatron加速器で研究、1995年のトップクォークの発見に貢献した。

その後、高エネルギー加速器機構Bファクトリー加速器において研究し、 2001年のB中間子系における物資と反物質の対称性の破れの発見に至る。

最近は、J-PARC加速器を使ったニュートリノ振動実験、さらに、ダークエネルギーの解明を目指して、すばる望遠鏡に超広視野CCDカメラを搭載して行う、大規模深宇宙探査を進めている。

サイエンスはおもしろい。ましてや、サイエンスを研究することは、もっとおもしろい。数学や物理の手法によって宇宙を研究することは、圧倒的におもしろい。この単純な思いが、IPMUの原動力であり、世界トップレベルの研究者をひきつける最も重要な要素だと思う。IPMUに来れば、国籍、性別、年齢に関係なく、おもしろい研究を思う存分にすることができる。必要なのはサイエンスに対する情熱と絶えることのない探求心だけである。そんな研究環境を実現すれば、研究成果すなわち、新しい発見は自ずとついてくると信じている。新しい拠点が、真に世界をリードするまでに育つかどうかは、この思いをいかに真剣に受けとめ、どれだけ強い意志を持って、前進できるかにかかっていると思う。

IPMUで取り上げる研究テーマは、いずれも非常に手強く、すぐに結果が出ないかもしれない。満足できる結果が出るまでに、ひょっとすると20年あるいは 30年かかるかもしれない。が、それだけの時間をかけても追求する価値とおもしろさがあると思う研究テーマに正面から取り組む。ダークエネルギーやダークマターの本当の姿、大統一理論の中身、ニュートリノの秘密など、どうしても知りたい。そのためには、我々が現在持つ知識そして使える技術の総力をあげて、もしなければ自ら開発してでも取り組みたい。そのためには、既存のシステムの制約や言葉の壁を乗り越え、数学、物理、天文学の世界的英知を結集して取り組みたい。これが、IPMUという研究組織を設計し運営するための指導原理だと思っている。

極端に細分化された数学、物理、天文学の最先端で活躍する研究者をひとつの新しい組織に放り込んで、いっしょに仕事をさせてみる。IPMUのこのユニークな試みからどんな新しいことが出てくるのか?  どんなサイエンスのブレークスルーが生まれるのか?  リスクのある試みかもしれない。が、リスクを負ってでも前進しない限りサイエンスの醍醐味は味わえないし、成果もあがらない。IPMUには、そのリスクに挑戦する野心的な若い研究者が各国から集結しつつある。日本の若者も理科離れなどと言っている暇はない。圧倒的におもしろいサイエンスを自ら楽しむチャンスは、そう頻繁に来るものではない。若者よ、IPMUを目指せ。結果は、必ずついてくる。