人文社会科学系現代科学論

Kavli IPMUの人文社会科学系現代科学論の研究者たちは、物理系の事例を主としながらも、広く科学と社会の信頼関係やよりよい未来のための政策決定支援の研究を行っています。

現代における科学と社会の関係は複雑です。特にアルヴィン・ワインバーグが「トランスサイエンス」と呼んだ、科学で問うことはできるが科学で答えることができない問題群、たとえば気候変動の問題に対して、政治判断に科学に加えて経済・政治が色濃く反映される分野について、どのように民主的に議論を進めて社会の行く先を決めていくのかは大きな問題です。

人文社会学系ではこうした議論は近年では科学技術社会論で、さらに元をたどれば政治哲学のハンナ・アーレントや哲学のユルゲン・ハーバーマスによって議論が積み重ねられてきました。科学知識を持つ科学者は、よりよい社会の決定のために、言説へのアクセスをしやすくする、つまりわかりやすく説明することが求められています。

これとは別の理由で、科学者からの説明を強く求める時代がありました。70年代のエコロジーへの関心の高まりと科学技術への反発的な考えが広まった対処として、イギリスをはじめとする世界各国では、80年代までは、科学者から社会への一方的な情報提供を強化することが重視されました。

しかし90年代半ばのイギリスにおけるBSE騒動の混乱から、科学者からの一方的な情報提供では、リスクのある複雑な社会との信頼関係を保つことはできなかったという反省が生まれました。そして、科学と社会の信頼をつなぐための、科学と社会の「双方向のコミュニケーション」が重要であるという新しい視点が提示され、「科学コミュニケーション」という新しい活動および学術分野が出てきたのです。現代では、こうした考え方がどのように政策に活かされ社会全体に貢献するのかという点が特にも注目をされています。

Kavli IPMUの研究者たちは、こうした学術の大きなうねりの中で、現代における社会の課題に注目をし、よりよい科学と社会の関係構築のための研究を進めています。科学の信頼はひとつの大きなテーマです。東日本大震災の後の科学者の情報発信の在り方や、SNSやクラウドファンディングを通じた科学支援の構造、また、大型装置を有するビッグサイエンスの在り方や、数物系に女子が少ない問題構造の解明などについても注目をしています。また、科学と社会の関係を考える際には、科学への資金提供の移り変わりも重要な研究対象です。

こうした研究は、Kavli IPMUの目指す人類共通の問いへの挑戦を広く社会と共有し、共感を得る活動を根幹から支えます。

(Last update: 2018/10/19)

 

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