2013年度 日本数学会幾何学賞受賞--河野俊丈主任研究員--

2013年10月07日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)

 

河野俊丈主任研究員河野俊丈主任研究員

2013年9月25日、日本数学会は2013年度の幾何学賞の受賞を発表し、東京大学大学院数理科学研究科教授でKavli IPMUの主任研究員を兼任する河野俊丈氏が同賞を受賞しました。

幾何学賞は、日本数学会幾何学分科会により1987年に創設され、微分幾何学、位相幾何学や代数幾何学を含む広い意味での幾何学の研究において目覚ましい業績、長年にわたる重要な業績の累積、また著書等によって後進へのよき指針を与えた数学者に贈られる賞です。河野主任研究員の受賞は『幾何学的量子表現に関する一連の研究』の業績によるものです。
Kavli IPMUからの幾何学賞は2011年度斎藤恭司主任研究員、2012年度戸田幸伸特任准教授に続いての河野主任研究員の受賞により3年連続、3人目の受賞となります。
同賞の受賞特別講演は2013年9月25日、日本数学会秋季総合分科会において行われました。

受賞題目:

幾何学的量子表現に関する一連の研究

受賞理由:

河野氏の幾何学的量子表現に関する一連の研究の中でも、特にKZ方程式の研究において、彼は配置空間の基本群であるブレド群からのモノドロミーが量子群で記述できることを発見し、その表現からノットの量子不変量を導くという、その後の様々な研究の先駆けをなす目覚ましい仕事をされました。 彼はこれをさらに発展させて、一般種数のリーマン面のモジュライ空間上の射影的平坦なベクトル束のホロノミーの量子群による具体的記述も与えましたが、この結果は Konsevichにより提唱されたTopological Quantum Field Theory の枠組みの最初の重要な仕事ともなっています。

 受賞業績:

河野氏は幾何学的量子表現の分野で世界をリードする数々の研究業績を挙げられ、その発展に重要な貢献を果たしてこられました 特にKZ方程式の研究において、当時は未だ量子群の概念が生まれたばかりの時期であったにもかかわらず、彼は配置空間の基本群であるブレイド群からのモノドロミーが量子群で記述できることを発見し、さらにその表現からノットの量子不変量を最初に導き出しました。 これらは、その後生まれた種々の研究の先駆けとなり、1990年にDrinfeldはKZ方程式のモノドロミーとuniversal R-matrixとの関係を確立しましたが、微分方程式の解析を通じて最初にその事実を見出した河野氏の先見性は高く評価されます。 河野氏はこれらの仕事をさらに発展させて,一般種数のリーマン面のモジュライ空間上の射影的平坦なベクトル束のホロノミーの量子群による具体的記述を与え,Wittenがpath-integralによりheuristicに与えていた3次元多様体の不変量にヘーガード分解や写像類群を用いた基礎付けを与えました。 この結果は,これより少し前にKontsevichにより提唱されたTopological Quantum Field Theory の枠組みの最初の重要な仕事ともなっています。