小松英一郎 客員上級科学研究員が米国物理学会 (APS) フェローに選出

2015年11月5日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)

 

小松英一郎氏とWMAP衛星の模型(Image Credit:川端裕人)小松英一郎氏とWMAP衛星の模型
(Image Credit:川端裕人)

ドイツのマックスプランク天体物理学研究所所長で東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) 客員上級科学研究員の小松英一郎 (こまつ えいいちろう) 氏が米国物理学会 (APS) フェローの宇宙物理学部門に選ばれました。

APS フェローは物理学への優れた学術的貢献を果たしたとされる研究者に与えられる栄誉で、約5万人を擁する米国物理学会の会員のうち APS フェローは全体の0.5%以下とされており、米国物理学会の歴史において宇宙物理学部門にはこれまで2006年ノーベル物理学賞受賞者のジョージ・スムート氏、2011年ノーベル物理学賞受賞者のソール・パールムッター氏、日本人では戦後日本のX線天文学や赤外線天文学の発展に貢献した早川幸男氏が選ばれています。また、プリンストン大学教授で Kavli IPMU 主任研究員でもあり、小松氏の関わってきた WMAP (ダブリュ・マップ) 衛星の実験グループを主導したデイビッド・スパーゲル氏も2013年に選ばれています。

今回の小松氏の APS フェロー選出理由は「初期宇宙の物理解析におけるバイスペクトラムの先駆的導入と WMAP データ解析における主導的役割」です。

小松氏は2001年から2010年まで宇宙マイクロ波背景放射 (CMB) の精密観測を行った WMAP 衛星実験グループに参加してきました。WMAP は、現在の宇宙論の枠組みとなる宇宙の組成比や宇宙進化に関わる重要なパラメータ (暗黒物質の密度やハッブル定数など)  を決定し、さらに、宇宙初期に起こったとされる急激な加速膨張(インフレーション)理論の観測的検証に大きな貢献をしています。小松氏は WMAP の論文の筆頭著者を努めるなど、主要メンバーとしてデータ解析やデータの理論的解釈を率い宇宙物理学分野の発展に寄与してきました。

小松氏は選出について以下のように述べています。
「このたび、アメリカ物理学会のフェローに選出していただき、光栄です。推薦してくださった方々に感謝いたします。3年前にドイツに移りましたが、13年間を過ごしたアメリカは、私を研究者として一人前にしてくれた特別な場所です。この栄誉を励みに、これからも研究に取り組んでいきます。」

 
小松英一郎氏 略歴

2001年 東北大学大学院理学研究科天文学専攻博士課程後期修了
2001年 プリンストン大学博士研究員(WMAP フェロー)
2003年 テキサス大学天文学科助教授
2008年 テキサス大学天文学科准教授
(2008年2月- 2010年8月 東京大学数物連携宇宙研究機構客員科学研究員)
2009年-2012年 テキサス宇宙論センター所長
2010年-2012年 テキサス大学天文学科教授
(2010年8月- 現在 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構客員上級科学研究員)
2012年8月 マックスプランク宇宙物理学研究所所長
 
関連リンク

米国物理学会 ウェブページ
小松英一郎氏 ウェブページ
マックスプランク宇宙物理学研究所
 
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