構造形成

銀河の構造形成において、我々は主に初期宇宙での原始星の形成、銀河の形成と進化、大規模構造の形成に興味を持っている。

標準ビッグバン理論では、ごく初期の宇宙は非常に高温で、かつ物質の分布はほぼ一様等方に均一だったと考えられている。この宇宙初期の物質分布における小さな密度揺らぎが、重力の作用によって成長し、初代星を形成し、やがて銀河を形成していった。

銀河の大規模構造は、宇宙初期の密度揺らぎから解析的に予言することができるので、大規模構造を観測することで、宇宙が何でできているのか、どのように宇宙が加速膨張しているのかを調べることができる。宇宙は加速膨張していることが超新星爆発を用いた観測によって明らかにされたが、これはそれまで考えられていたエネルギー(物質や光)以外に何かわからないエネルギーがこの宇宙に満ちていることを示唆していた。なぜなら、もし宇宙が物質と光によってのみ構成されているのならば、重力は引力なので、宇宙がたとえ膨張していたとしても、その膨張速度は減速していくはずだからである。しかし、その膨張速度が加速していると言う観測結果は、宇宙に何らかの加速膨張を引き起こしているエネルギーがあることを意味していた。このエネルギーのことを、私たちは暗黒エネルギーと呼んでいる。銀河の大規模構造を用いて暗黒エネルギーを制限する方法には超新星爆発を用いた方法だけでなく、重力レンズやバリオン音響振動、銀河団を用いた方法がある。こういった観測宇宙論の分野は現在、精密宇宙論と呼ばれることもある。それは、スローンデジタルスカイサーベイ(Sloane Digital Sky Survey; SDSS)を始め広い領域を観測する銀河サーベイが可能になったことで、大規模構造による宇宙論パラメータの制限がより精密になってきたからである。現在、SDSSによる宇宙論パラメータの制限の精度は1%であり、現在進行中及び将来の銀河サーベイではサブパーセントでの制限が目標となっている。

日本でも現在、すばる望遠鏡を用いたハイパー・シュプリーム・カム(HSC)サーベイと呼ばれる銀河撮像サーベイが進行中である。HSCサーベイでは重力レンズを用いての暗黒エネルギーの解明が主眼となっており、それに続くプライム・フォーカス・スペクトログラフ(PFS)(2019年を予定)と呼ばれる分光サーベイではバリオン音響振動を用いての高赤方偏移での宇宙論パラメータの制限及び、暗黒エネルギー、ニュートリノ質量の制限を目指している。

また、銀河形成自体を研究主眼とした場合、その研究課題は多岐に渡る。それは銀河の進化の過程には様々なルートがあり、それが現在の宇宙で観測される多様な銀河の集団となるからである。また銀河の進化においては重力だけでなく、ガスの加熱や冷却、星形成、フィードバックなどのより複雑なバリオン物理学を必要とする。カブリ IPMUの研究者は現在、銀河の形成史に関わる物理過程を明らかにするために様々な観測手法を採用している。

その一つがMaNGA(Apache Point Observatoryの近くの10,000個の銀河のマッピング)調査である。これはSDSS-IVの共同研究の一環として行われ、カブリ IPMUが主導的役割を果たしてきた。MaNGAは銀河の表面上で連続的な分光測定を行い、内部の動き、星形成活動、化学組成などを同時に明らかにすることができ、拡張バリオン振動分光サーベイ(eBOSS)などの追加のSDSS調査では、銀河周辺のガスの挙動を研究し、噴出したガスと銀河から放出されたガスの両方を星形成や活発な銀河核によって調べることができた。そのほかにも、Atacama Large Millimeter Array(ALMA)やJansky Very Large Array(JVLA)のようなラジオ/ミリ波望遠鏡を用いて、初期の宇宙で気体、星の形成、活動的な銀河の核を観測してきた。こういった観測的な研究のほかに、コンピュータを使って大きな銀河集団をモデル化し、個々の銀河の詳細なシミュレーションを研究しているグループもある。これらのシミュレーションは、銀河形成のさまざまな理論的モデルをテストし、探索する上で基本的な役割を果たしている。

さらに、初期宇宙の原始星や銀河形成を研究するために、銀河系の最古の星の高分解能分光観測と最先端のコンピュータモデルを組み合わせて、最初の星や銀河の性質を導き出す研究も活発である。これは、宇宙のその後の化学進化をよりよく理解するための鍵となり、これらの研究の結果は、Subaru-HSC / PFSダークエネルギー調査の計画を改善するために使用されることになる。特に、PFSは、金属の貧しい星の前例のない高分解能スペクトルを提供し、初期の宇宙の理解をさらに深めることが期待されている。 (Last update: 2018/05/15)

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