測定装置開発

EGADS Project (Evaluating Gadolinium’s Action on Detector Systems), which is now under construction in the Kamioka mine, will be used to establish the viability of gadolinium-enhanced water Cherenkov detector for detecting supernova relic neutrinos.

実験物理学や天体観測は、最先端の技術を駆使して建設された測定器から得られるデータから新しい知識を得るものである。科学においてはすべてのアイデアは実験で実証されなければならないので、データは科学の活力源となる。すでにある膨大な科学データから賢い知識と想像力を使って引き出されたさまざまな理論の検証に、信頼性が高く適切なデータを供給することが実験の醍醐味である。

現在あるいは将来の実験で到達可能な範囲をさらに拡張するための方法を提供するのが測定器開発であり、しばしば実社会に役立つ新技術に繋がる。また、我々の宇宙解明でも大切な一部である。

当機構で行われている測定器開発は解決を迫られる問題や研究者個々の手法の多様性を反映して多岐にわたっている。

  • 神岡検出器を満たす高純度水に溶融性の高いガドリニウムを安定的に混ぜる方法の開発。うまくいった場合、残留超新星ニュートリノ検出のエネルギー閾値とバックグラウンドを飛躍的に下げることができる。
  • 大量のアルゴンやキセノンなどの液化希ガスの純度を上げる新技術の開発。このような液化希ガスは将来の暗黒物質やニュートリノ検出のためのタイムプロジェクション測定器に使用される。
  • すばる望遠鏡のための光ファイバーを使用した多天体分光装置の開発。このような装置は多くの天体の分光の同時測定を可能とするため、広域銀河観測の強力な手法になる。
  • B中間子の崩壊点を精密に測定するために使われるシリコン崩壊点検出器の組立技術、性能試験技術、量産技術の開発研究。Belle II実験の成否はこのプロジェクトに大きく左右される。
  • 暗黒物質探索の感度を飛躍的に上げるための諸々な試み:高純度ゲルマニウム検出器の開発、ヨウ化ナトリウムやヨウ化セシウムのようなシンチレーション光を出す結晶と光電子倍増管を液体窒素温度で結合させる技術の開発、超高純度ヨウ化ナトリウム結晶を使った暗黒物質検出器モジュールの試作。
  • XENONnT検出器におけるガドリニウム捕獲に基づくalpha/n反応による中性子除去の最適化。この反応の中性子が検出器に信号を残さなかった場合は、WINPの反跳の信号と間違われる可能性がある。
  • 宇宙ミッションのための偏光変調器の開発:直径が約50cmのサファイアから成る広帯域半波長板を最小放熱で3年間にわたって極低温で回転させる点がチャレンジングである。超伝導磁気軸受と極低温ACモータにより極低温での滑らかな回転を実現する。また、広帯域反射防止機能をレーザー加工によるモスアイ構造で実現すべくLiteBIRDに向けた開発を進めている。
  • CMB観測用望遠鏡システムの開発:宇宙および地上CMB望遠鏡用超伝導転移端センサー(TES)ボロメータアレイを用いた光学系の試験も進行中である。

(Last update: 2018/05/31)

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