宇宙は膨張している、つまり遠くにある銀河ほど早く動いている。これはハッブルの法則と呼ばれている。この観測事実は、もし時間を逆に辿っていくと宇宙は小さく密度が高く非常に高温だったことを意味する。初期宇宙の進化はアインシュタイン方程式の一様等方解であるFriedmann-Lemaitre-Robertson-Walker (FLRW) 時空によって記述され、ビッグバン標準理論はこれに基づいている。ハッブルの法則、ビッグバン核合成(BBN)、宇宙背景マイクロ波放射(CMB)がこのビッグバン標準理論を主に支える。これら3つの観測は今でも初期宇宙の大切な探索方法である。
これまでの大成功にもかかわらず、ビッグバン理論は地平線問題や平坦問題など難しい理論的課題に直面する。これらの問題点を解決する有力候補として提案されたのが、宇宙のきわめて初期の段階で指数関数的加速膨張が起こったとするインフレーション宇宙理論である。しかし、その後の研究で、インフレーションを起こすスカラー場(インフラトンと呼ばれる)の量子的ゆらぎがごく小さな宇宙空間の曲率揺らぎを創り出し、それが密度揺らぎを誘起し現在の宇宙で見られる銀河や銀河団構造を形成する種を与えることが,インフレーションの最も重要な理論的予言であることが分かってきた。この密度揺らぎの性質はインフレーションモデルに依存するが、それはCMBの温度異方性や宇宙の大規模構造の詳細な性質を調べることによって探ることが可能である。また、同時に時空そのものの量子揺らぎとして、重力波揺らぎも生成され宇宙論的背景重力波を形成することが分かっており、これを検出すべく観測的努力が続けられている。
このように、最近の観測技術の発展は初期宇宙の進化に関してこれまでにない精度で調べることを可能にし、我々の宇宙についての理解を飛躍的に高めた。しかし、どのようにしてインフレーションが起こったのか、どのようにしてインフレーションの後に宇宙が再び熱せられたのか、いかにして暗黒物質やバリオン非対称が出来たのか、密度のゆらぎは非ガウス統計的性質を持つか、などまだほとんど分かっていない。このような問題に取り組んで、どのように宇宙がインフレーション期から現在の宇宙に進化していったかを解明したい。
(Last update: 2018/05/07)
メンバー
- Shunsuke Adachi
- Sebastian Bahamonde
- Tommaso Ghigna
- Elisa Gouvea Mauricio Ferreira
- Masashi Hazumi
- Anamaria Hell
- Masahiro Ibe
- Hirokazu Ishino
- Baptiste Jost
- Masahiro Kawasaki
- Sergey Ketov
- Kazunori Kohri
- Eiichiro Komatsu
- Alexander Kusenko
- Clement Leloup
- Qiuyue Liang
- Kaloian Lozanov
- Tomotake Matsumura
- Marta Monelli
- Shinji Mukohyama
- Hitoshi Murayama
- Maria Mylova
- Toshiya Namikawa
- Yasunori Nomura
- Ippei Obata
- Shi Pi
- Yuki Sakurai
- Misao Sasaki
- Katsuhiko Sato
- Satoshi Shirai
- Xue Song
- Samantha Stever
- Masahiro Takada
- Volodymyr Takhistov
- Taizan Watari
- Tsutomu Yanagida
- Vicharit Yingcharoenrat
- Jun'ichi Yokoyama