世界初!太陽観測ロケット実験FOXSI-3、太陽コロナからの軟X線を集光撮像分光観測することに成功!!

2018年9月11日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)

 

1. 発表概要

2018年9月7日午前11時21分 (アメリカ山岳部夏時間;日本時間では、2018年9月8日午前2時21分) 、米国ニューメキシコ州ホワイトサンズの観測ロケット打ち上げ場にて、太陽観測ロケットFOXSI (Focusing Optics X-ray Solar Imager) の3号機 (FOXSI-3) の打ち上げを行いました。FOXSI-3 は、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) を含む、国立天文台、名古屋大学、JAXA宇宙科学研究所、東京理科大学、ミネソタ大学、カリフォルニア大学バークレー校、NASAからなる日米合同の国際共同研究プロジェクトです。
 

打ち上げられたFOXSI-3は、最高到達高度約300kmの弾道軌道で約15分間飛翔し、「活動領域」、「静穏領域」、「太陽の北極域」といったX線輝度の異なる3つの太陽コロナ領域を、約6分間観測しました。FOXSI-3搭載の観測機器は全て正常に動作し、世界初となる太陽コロナの軟X線・集光撮像分光観測 (※1) に成功しました。
 

FOXSIは、太陽コロナが放つX線を集光撮像分光観測することで太陽コロナにおける高エネルギー現象 (エネルギー解放、粒子加速 ※2、加熱など) の理解を目的として、これまで1号機のFOXSI-1、2号機のFOXSI-2が打ち上げられてきました。今回のFOXSI-3は3号機目で、Kavli IPMU の高橋忠幸主任研究者、JAXA 宇宙科学研究所の渡辺 伸助教らが開発した硬X線領域観測用のテルル化カドミウム (CdTe) 両面ストリップ検出器 (CdTe DSD) や 国立天文台の成影典之助教、名古屋大学の石川真之介研究員らが開発した軟X線領域観測用の高速度X線 CMOS カメラをはじめとする日本が開発した最新技術が複数搭載されています。高橋忠幸 Kavli IPMU 主任研究者は、JAXA 宇宙科学研究所在籍時から FOXSI に携わっており、FOXSI-1 においては開発したシリコン (Si) 両面ストリップ検出器 (Si DSSD) を提供。FOXSI-2 からは、Si DSSDに加えて、硬X線に対して高い検出効率を持つ CdTe DSDを提供しています。FOXSI-3 では、より高性能のCdTe DSD が搭載されました。CdTe DSD は、硬X線観測用の検出器としては60μmという世界最高の解像度を実現しており、太陽観測に不可欠な秒角レベルの空間分解能を持つ撮像と、硬X線域の分光を同時に達成しています。更には、硬X線に対する感度が100%であり、高解像度化により太陽観測に新たな可能性をもたらしました。

 

今回打ち上げられた FOXSI-3 の科学目的の一つとして、「ナノフレア」のコロナ加熱(※3)への寄与を調べることが挙げられます。ナノフレアは、通常の太陽フレアの10億分の1程度の極めて小さなフレアですが、太陽コロナの加熱の担い手の有力な候補の1つであると考えられています。通常、コロナの温度は数百万度程度ですが、ナノフレアが起こると1000万度の高温のプラズマが生成されると考えられています。今後、FOXSI-3 で得られたデータを詳細に解析し、1000万度の高温プラズマが太陽コロナ中に恒常的に存在するかを調べることで、ナノフレアのコロナ加熱への寄与に関する理解が進むと期待されます。

詳細は国立天文台 SOLAR-C 準備室の記事 をご覧下さい。

 

2. 用語解説
(※1) 集光撮像分光観測
FOXSI-3 は、X線を鏡によって集め、検出器によって撮像と分光を同時に行う。分光とは、光 (ここではX線) をエネルギーごとに分けること。空間情報が得られる撮像と、エネルギー情報が得られる分光を同時に行う撮像分光は、現象の物理情報を得る有効な手段である。FOXSI-3 ではこの撮像分光を高速で行うことで、時間情報も取得できる点が大きな特徴である。

(※2) 非熱的プラズマと粒子の加速
安定した状態 (エネルギーの平衡状態) にあるプラズマは、その状態を温度で表現することができ、熱的プラズマと呼ばれる。しかし、急激に加速されたプラズマ粒子は、温度では表現することが出来ず、非熱的プラズマと呼ばれる。プラズマの温度や、非熱的プラズマの生成要因である粒子加速は、プラズマが出すX線を分光観測し、エネルギーごとの強度の分布 (スペクトル) を取得することにより詳細に調べることができる。

(※3) コロナ加熱
太陽表面温度が6000度であるのに対し、上空のコロナの温度は数百万度である。太陽のエネルギーは太陽中心部で生み出されているので、中心部から離れたコロナの方が、表面よりも遥かに高温なのは非常に不思議なことである。コロナがどのようにして加熱されているかは、太陽物理学の重要な研究課題の一つである。

 

関連リンク

2018年9月11日
観測ロケット実験FOXSI-3打ち上げ・観測成功!! (国立天文台 SOLAR-C 準備室のページ)
https://hinode.nao.ac.jp/news/topics/foxsi-3/

高橋忠幸研究室ウェブページ
https://member.ipmu.jp/takahashi_lab_UT/

Kavli IPMU の FOXSI 紹介ページ (Kavli IPMUのリサーチプロジェクトページ)
https://www.ipmu.jp/ja/research-activities/research-program/FOXSI

NASA の FOXSI-3紹介ページ (英語)
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2018/nasa-funded-rocket-to-view-sun-with-x-ray-vision

ミネソタ大学の FOXI のウェブサイト (英語)
http://foxsi.umn.edu