2025年12月23日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU, WPI)
宇宙を観る「新しい眼」に、ハワイのことばが宿りました。すばる望遠鏡の観測装置 PFS に贈られた名前「ʻŌnohiʻula」(オーノヒウラ)には「私たちの起源を解き明かす」という意味が込められています。ハワイの人々と土地への敬意、そして共に宇宙を見つめていくという思いを象徴するものです。
すばる望遠鏡の主焦点に搭載され、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU, WPI)が主導してきた超広視野多天体分光器 PFS(Prime Focus Spectrograph;プライム・フォーカス・スペクトログラフ)は、広い視野内で最大約2400個もの天体を同時に捉え、可視光から近赤外線までの広い波長域のスペクトルを一度に取得できます。2025年3月から本格的な科学観測を開始し、宇宙論、銀河進化、天の川銀河の構造など、幅広い分野で大規模分光観測の新時代を切り開くと期待されています。
2025年11月19日にハワイ島ヒロにあるハワイ観測所山麓施設で行われた命名式で、ハワイ大学ヒロ校のラリー・キムラ教授からハワイ語名「ʻŌnohiʻula」(オーノヒウラ)が PFS へ贈られました。今後、学術論文やプレスリリースなどにおいて、PFS は「ʻŌnohiʻula PFS」と表記され、ハワイの文化および人々への敬意を示していきます。
ʻŌnohiʻulaという名前には、「私たちの起源を解き明かす」という意味が込められています。「nohi」は「目で認識するもの」を意味し、ʻŌnohiʻula PFSが取り付けられる主焦点を人間の目に例えることから着想されました。「ʻula」は「赤」を意味し、ʻŌnohiʻula PFS が観測する膨大な数の赤方偏移銀河と、そしてそれに基づく宇宙初期と銀河進化の研究―すなわち「私たちの起源」への探求を想起させます。
キムラ教授はまた「ʻŌnohiʻulaは、地上から見上げたときに広がる虹のスペクトル、そして宇宙を見つめる PFS の“眼”を象徴しています。さらに、ハワイ文化における赤は、天と結びついた、神聖な色です」と説明します。
今回の命名は、最先端の科学的探究とハワイの知に基づく視点が響き合うことを示すものです。すばる望遠鏡が担う国際的な天文学研究の重要性と、マウナケアがハワイの人々にとって持つ深い文化的価値―その両方を大切にしながら歩む姿勢を象徴しています。
「すばる望遠鏡がここハワイの文化とつながることはとても重要です。その結びつきを生むものの一つが、この名前です」とキムラ教授は語ります。
PFSのプロジェクトマネージャーを務めてきた Kavli IPMU 客員上級科学研究員を兼ねる国立天文台ハワイ観測所の田村直之教授は、「ʻŌnohiʻula は、宇宙を観る新しい強力な眼であるだけでなく、ハワイの人々との対話と協働のもとに探究を進めていくという私たちの誓いでもあります。ʻŌnohiʻula PFS が新しい発見の時代を切り開いていくにあたり、この名をいただくことを光栄に思います」語ります。
PFS の研究代表者(Principal Investigator)である Kavli IPMU の村山斉教授(兼 カリフォルニア大学バークレー校教授)は「PFS にハワイ語での美しい名前をいただくことができました。PFS のサイエンスを表したとてもいい名前です。この名前に恥じず、エキサイティングなサイエンスを出していかないといけない、と改めて気持ちを強くしました」と感謝と決意を述べています。
関連リンク
すばる望遠鏡の最先端の観測装置がハワイ語名「ʻŌnohiʻula」を授かる (国立天文台ハワイ観測所の記事)






