野本憲一 主任研究員が2015年のマルセル・グロスマン賞を受賞

2015年5月28日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU) 

野本憲一 氏野本憲一 氏

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の主任研究員で特任教授の野本憲一 (のもと けんいち) 氏が2015年度のマルセル・グロスマン賞の受賞者の一人に選ばれました。

マルセル・グロスマン賞は1985年に設立され、3年に1度開催されるマルセル・グロスマン会議 (注1) にあわせ授賞式を開催。天文学や宇宙物理学、物理学の基礎理論といった分野において人類が宇宙を理解する上で多大なる貢献を果たしたとされる研究者に対しその業績を祝して贈られてきました。日本人ではこれまでに、宇宙線物理学やX線天文学等の分野で大きな貢献を果たした早川幸男氏や小田稔氏が受賞。海外研究者ではロジャー・ペンローズ氏、スティーブン・ホーキング氏、ジョン・ホイーラー氏や、ノーベル物理学賞を受賞したアブドゥス・サラム氏、スブラマニアン・チャンドラセカール氏、リカルド・ジャコー二氏などがマルセル・グロスマン賞を受賞しています。

授賞式は、2015年7月12日から18日にローマ大学で開催される第14回マルセル・グロスマン会議会期中の2015年7月13日に行われる予定です。
 : 受賞者に贈られる銀の彫像 
(Image Credit: ICRA and ICRA Net) : 受賞者に贈られる銀の彫像
(Image Credit: ICRA and ICRA Net)

野本氏は、恒星がどのような進化を経て、どのような仕組みで超新星爆発を起こすのか、その過程で元素がどのように生み出されるか等、恒星進化や超新星爆発、元素合成の理論的研究で天文学に多大な貢献を果たしてきました。今回は「大質量星進化における連星系の役割に関する理論的予測」が評価され、受賞につながりました。超新星爆発を起こすような大質量星の中には、2つの恒星が重力で引き合いお互いの周りをまわりあっている「連星系」を作っているものがあります。野本氏はこうした連星系が大質量星の進化の多様性を生み出し、Ib, Ic, IIb, IIL 型超新星, 極超新星などの様々なタイプの超新星爆発やガンマ線バースト、それに伴う中性子星やブラックホールの形成過程に大きな影響を及ぼしていることを理論的に明らかにし、観測的な確認を推進してきました。    

今回の受賞について野本氏は以下のように述べています。
「連星系の進化の計算や超新星爆発の光度曲線やスペクトルの計算、その詳細な観測や解析など、今回の受賞につながった研究成果は、大学院の学生や博士研究員、諸外国の研究者等、多くの方々との理論的、観測的な共同研究が総合されて得られたものであることを強調したいと思います。こうした天文学の基礎的な研究が、ガンマ線バーストやブラックホールの形成など、相対論的な天体の最先端の研究としても評価されたことは大変光栄です。今後も、共同研究を推進し、宇宙の最先端の謎の解明に取り組んでいきたいと思います。」

野本憲一氏 略歴
1974年 東京大学大学院理学研究科天文学専攻博士課程修了
1974年 日本学術振興会特別研究員
1976年 茨城大学理学部物理学科助手
1982年 東京大学教養学部基礎科学科第二・助手
1985年 東京大学教養学部宇宙地球科学科助教授
1989年 東京大学理学部天文学科助教授
1993年 東京大学大学院理学研究科天文学専攻教授
2008年 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員特任教授
2014年 浜松プロフェッサーに着任 [宇宙のダークサイド(浜松ホトニクス)寄付研究部門]

 

7月13日マルセル・グロスマン賞授賞式にて: (左から)マルセル・グロスマン賞受賞の英・ケンブリッジ大学マーティン・リース名誉教授、野本憲一主任研究員、米・モンタナ州立大学鶴田幸子教授7月13日マルセル・グロスマン賞授賞式にて: (左から)マルセル・グロスマン賞受賞の英・ケンブリッジ大学マーティン・リース名誉教授、野本憲一主任研究員、米・モンタナ州立大学鶴田幸子教授

関連リンク
野本憲一氏 ウェブページ
野本研究室 ウェブページ
マルセル・グロスマン賞歴代受賞者 (英語)
第14回マルセル・グロスマン会議 ウェブページ (英語)

 

注1) マルセル・グロスマン会議
アルベルト・アインシュタインが相対性理論を構築する上で重要なアドバイスを行った数学者のマルセル・グロスマンの功績を記念し、相対性理論の研究者達により1975年に立ち上げられた。3年に1度の開催で、一般相対性理論や宇宙論等を主とした分野の国際会議で、一般相対性理論100周年にあたる今年は会議にとっても記念すべき年となる。