すばる望遠鏡HSCデータ解析ソフトウェアで作成した画像を公開

2013年8月6日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)

すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム, HSC) が、本格的な観測を開始しました(「新型の超広視野カメラが開眼、ファーストライト画像を初公開」)。Kavli IPMUでは、国立天文台、台湾中央研究院、米国プリンストン大学など国内外の共同研究機関とともにHSCの観測データを使って、重力レンズ効果を用いたダークマターの分布の探索、宇宙の膨張の歴史の探索など、様々な研究を繰り広げてゆく予定です。この研究を進めるためには、116素子、計8億7000万画素のCCDで取得される膨大なデータを処理するソフトウェアが必要で、Kavli IPMUでは、プリンストン大学、国立天文台と共同でHSCデータ解析パイプラインの開発を行ってきました。今回、HSCのファーストライトとして撮影したアンドロメダ銀河 M31 のデータをHSCデータ解析パイプラインソフトウェアで処理した画像を公開します。

この画像を作成するためのデータは、gバンド、rバンド、iバンド と呼ばれる3種類のフィルタを使ってそれぞれ10分、12分、16分の露出時間で撮影され、各バンドのデータを順に青、緑、赤に割り当ててカラー画像にしています。観測された領域が3つのバンドで完全には一致していないため、視野の端の部分で色が変わって見える部分があります。また、明るい星の中心部などでは、光が強すぎるために検出器のCCDが飽和しているところがありますが、実際の科学的研究ではこのような部分は利用しません。銀河の中心部の広範囲に渡ってCCDが飽和している部分は、今回の画像公開にあたって見やすさのため画像を加工してあります。

HSCデータ処理責任者としてデータ解析ソフトウェアの開発を率いている Kavli IPMUの安田直樹教授は、「HSCが世界最高レベルの『広視野高解像度カメラ』であることは間違いのないところですが、世界最高の研究成果を上げるためには、得られるデータを適切に扱い、短時間に最大限の情報を引き出す必要があります。そのために、我々はHSCデータ解析パイプラインの開発に取り組んできました。今回、HSCのファーストライトデータを用いて、パイプラインの機能、性能を確認することができました。今後、さらに性能アップを図っていく予定です。」とコメントしています。

図1: HSCで撮影した視野全体。すばる望遠鏡に取り付けたHSCでは満月9個分に相当する広大な視野を一度に撮影できます。(クレジット:HSC Collaboration / Kavli IPMU)図1: HSCで撮影した視野全体。すばる望遠鏡に取り付けたHSCでは満月9個分に相当する広大な視野を一度に撮影できます。(クレジット:HSC Collaboration / Kavli IPMU)
以下のリンクより高解像度のファイルをダウンロードできます。ファイルサイズの大きなものもありますのでご注意ください。(クレジット:HSC Collaboration / Kavli IPMU)

1024×1024ピクセル(1.5MB)
2048×2048ピクセル(6.0MB)
4096×4096ピクセル(25MB)
8192×8192ピクセル(98MB)
16384×16384ピクセル(359MB)

こちらからマウス操作によりズーム、視野の移動などが可能なwebページをご覧頂けます。(Adobe Flash Playerが必要です。)

図2: 2倍ズーム画像(クレジット:HSC Collaboration / Kavli IPMU)図2: 2倍ズーム画像(クレジット:HSC Collaboration / Kavli IPMU)
図3: 8倍ズーム画像(クレジット:HSC Collaboration / Kavli IPMU)図3: 8倍ズーム画像(クレジット:HSC Collaboration / Kavli IPMU)
図4: 32倍ズーム画像。地球から230万光年離れたアンドロメダ銀河内の星の一つ一つを見分けられます。(クレジット:HSC Collaboration / Kavli IPMU)図4: 32倍ズーム画像。地球から230万光年離れたアンドロメダ銀河内の星の一つ一つを見分けられます。(クレジット:HSC Collaboration / Kavli IPMU)

図5: MacOS X 壁紙風に処理したもの。画像をクリックして高解像度ファイル(17MB)をダウンロードできます。(クレジット:HSC Collaboration/ Kavli IPMU)図5: MacOS X 壁紙風に処理したもの。画像をクリックして高解像度ファイル(17MB)をダウンロードできます。(クレジット:HSC Collaboration/ Kavli IPMU)  

HSC の開発は、国立天文台、東京大学 (Kavli IPMU、理学系研究科)、高エネルギー加速器研究機構、台湾・中央研究院天文及天文物理研究所、米国・プリンストン大学が共同で行っています。また、 科学研究費補助金・基盤研究 (B) (課題番号: 15340065、研究代表者:宮崎聡)、特定領域研究 (課題番号: 18072003、研究代表者:唐牛宏)、および最先端研究開発支援プログラム (宇宙の起源と未来を解き明かす―超広視野イメージングと分光によるダークマター・ダークエネルギーの正体の究明―、中心研究者:村山斉) によるサポートを受けています。

お問い合わせ先

東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構 広報担当
大林由尚(おおばやし よしひさ)/ 土方智美(ひじかた ともみ)
e-mail: press◎ipmu.jp    Tel: 04-7136-5974/5977