
アインシュタインの一般相対論は3次元空間と1次元時間をひとつの4次元時空に統合し,重力を時空の曲がりの幾何学として記述する。これで多くの重力現象の説明や予言に成功してきた。また2015年には,ブラックホール連星が合体する過程からの重力波が史上初めて直接観測され,強い重力場での一般相論の検証が一段と進歩した。今後,さらに多くの重力波源が観測され,様々な極限的状況下の一般相対論の性質がより明らかになると期待されている。
しかし実験的には0.01ミリメートルより小さい距離では重力がどのように働くかは我々は知らない。それより小さい距離では重力が我々のまったく予想していなかった振る舞いをしているかもしれない。たとえば小さい距離では隠れた次元があるかもしれない。また,宇宙初期には全く異なる重力理論が宇宙を支配していたかもしれない。事実超弦理論やM理論など多くの理論はそのような余剰次元の存在や重力理論の修正を示唆する。余剰次元が宇宙のいたる所に存在していて我々には見えないだけなのかもしれない。余剰次元は直接に見ることはできないが,高エネルギー実験や宇宙観測から間接的証拠を得られるかもしれない。
また,数十億光年といったような大きな距離での重力も一般相対論とは異なるかもしれない。最近の精密観測は宇宙の膨張が加速していることを明らかにした。これは,もし一般相対論が正しければ,宇宙の70%以上が見えないしかも圧力が負のエネルギーで満たされていることを意味する。このエネルギーは暗黒エネルギーと呼ばれているが,その正体はまったくわかっていない。この状況は19世紀に発見された水星の近日点移動の話を思い起こさせる。水星のこの異常な振る舞いを説明するためヴァルカンと呼ばれた一種の暗黒惑星の存在さえ提案された。しかしよく知られているように暗黒惑星は存在せず,正しい説明はニュートンからアインシュタインへと重力理論の変更によってなされた。このことを思い起こしながら,アインシュタイン理論を大きな距離で変更して暗黒エネルギーの謎を解明できないかを探る。(Last update: 2018/05/08)
メンバー
- Sebastian Bahamonde
- Tomohiro Fujita
- Anamaria Hell
- Benjamin Horowitz
- Sergey Ketov
- Kazunori Kohri
- Clement Leloup
- Qiuyue Liang
- Kaloian Lozanov
- Thomas (Tom) Melia
- Shinji Mukohyama
- Maria Mylova
- Yasunori Nomura
- Misao Sasaki
- Yevgeny Stadnik
- Masahiro Takada
- Atsushi Taruya
- Edwin Turner
- Marcus Werner
- Vicharit Yingcharoenrat
- Jun'ichi Yokoyama