天の川銀河の中に宇宙線加速器を発見 --Alexander Kusenko併任研究員--

2010年8月6日

数物連携宇宙研究機構(Institute for the Physics and Mathematics of the Universe:略称 IPMU)
 

これまでの歴史上、最大の宇宙線測定装置からのデータを解析した結果、UCLAと日本の研究チームは、我々の住む天の川銀河の中で原子核の加速器が作動している証拠をつかみました。

従来、超高エネルギー宇宙線の起源は遠方の銀河にあり、星々を飲み込み、最新のライフルから発射する弾丸のエネルギーに匹敵する「巨視的な」エネルギーまで陽子を加速できるような巨大ブラックホールから飛来すると考えられてきました。ところが今年初めにピエール・オージェイ観測所は驚くべき報告をしました。高エネルギー宇宙線の多くが陽子ではなく原子核であり、高エネルギーになるほど陽子に比べて原子核の割合が多くなるという報告でした。原子核は陽子に比べて壊れやすく、長い宇宙の旅の途中で陽子に壊れるだろうと考えられていましたので、この報告は予想だにされませんでした。さらに、超高エネルギー領域に宇宙線を加速するメカニズムを考えても、陽子より原子核が選択的に加速されるというケースは非常に考えづらいのです。

このパラドックスはカルヴェ、クセンコ、長滝によって解決されました。結果は近くフィジカル・レビュー・レターズ誌に掲載されます。我々の銀河で起きる星の爆発は陽子と原子核両方を加速します。しかし、陽子がすぐに銀河から出て行くのに対して、より重くて動きの鈍い原子核は銀河内に渦巻く磁場にトラップされて、陽子に比べて永く銀河内に留まるのです。その結果、我々の銀河系内では原子核密度が増大し、ピエール・オージェイの観測が示すように大量の原子核が地球に降り注ぐことになるのです。

粒子を超高エネルギーに加速できるであろう星の爆発は他の銀河で見つかっていて、ガンマ線バーストを出すことで知られています。今回の研究によりますと、同じような巨大爆発は我々の銀河の中でも、少なくとも100万年に数回の割合で起きていたという証拠を得ました。

現在観測される超高エネルギー原子核は数100万年以上に渡って巣のように張り巡らされた磁場にトラップされたものであり、複雑な磁場内の無数の回転や反転のため、観測される方向は完全にランダムになってしまいます。しかし研究チームは、他の銀河から来る超高エネルギー陽子についてはその源の方向を示しているはずであり、ピエール・オージェイ観測所は貴重な荷電粒子天文学のデータを提供できると予想しています。

発表雑誌:Physical Review Letters  2010年8月20日号

論文タイトル:超高エネルギー宇宙線成分のエネルギー依存性観測結果が示す銀河内ソースと磁場の役割

著者:アントニオ・カルヴェ(UCLA)、アレキサンダー・クセンコ(UCLA/IPMU)、長滝重博(京都大学基礎物理学研究所)


本件に関するお問い合わせ先

研究内容

  • UCLA/IPMU アレクサンダー クセンコ Alexander Kusenko

E-mail. kusenko _at_ ucla.edu

報道対応

  • IPMU広報 宮副英恵 Fusae Miyazoe

E-mail. press _at_ ipmu.jp