米国カブリ財団による基金設立および数物連携宇宙研究機構がカブリ研究所になることについて

 平成24年2月8日

国立大学法人東京大学
記者会見
 
米国カブリ財団による基金設立および
数物連携宇宙研究機構がカブリ研究所になることについて
 
 東京大学が国立大学法人として初めて海外の財団からの寄附による基金で恒久的に支援を受ける研究所を実現し、数物連携宇宙研究機構が、カブリ研究所の一つとなります。
 
 東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構(IPMU)は、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI, World Premier International Research Center Initiative)に採択され200710月に発足しました。同機構では現代基礎科学の最重要課題である暗黒エネルギー、暗黒物質、統一理論(超弦理論や量子重力)などの研究を数学、物理学、天文学における世界トップクラスの研究者の連携によって強力に推進しています。今年度のWPIプログラム中間評価においても唯一のS(最高)評価を受けるなど、世界から注目される研究拠点に成長しつつあります。
 
 カブリ財団は、ハーバード、MIT、ケンブリッジ等世界の有力大学の研究機関において宇宙物理、ナノサイエンス、脳科学、理論物理学の4分野を支援して、「カブリ」の冠をつけたカブリ研究所に基金を拠出、世界トップレベルの研究を支えています。
 
 東京大学とカブリ財団は、IPMUをカブリ研究所 (Kavli Institutes)の一機関としてカブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)と命名すること、カブリ財団からの寄附により750万ドル(約5.7億円)の基金を設立し、基金からの年間支払配当によりKavli IPMUの研究を助成することに合意致しました。平成2441日に東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構となり、新たなスタートを切ります。海外の財団から基金を獲得し、支援を受ける冠研究所となるのは国立大学として今回が初めてです。
 
 東京大学では、大学の新しい形を目指し国際競争力を高めるため、濱田純一総長による本学の中期的ビジョン「行動シナリオ FOREST 2015」のもと、2020年までに2000億円の基金を作る計画です。その中で、外国の財団からの寄附による基金で支援を受ける研究所が実現したことは、新しいスキームで海外から資金の導入ができたという成果であり、本学の目指す新しい大学像に向けて大きく弾みをつけられたと言えます。また、現在10年という時限つきのWPIプログラムによって設立された研究機構にとって、基金により恒久的に支援を受ける仕組みを導入できたことは研究機構を恒久的なものにするために大きく前進したと言えます。
 
お問い合わせ先:
 東京大学広報課 電話 03-5841-2031 FAX 03-3816-3913
e-mail: pr@ml.adm.u-tokyo.ac.jp
 
参考:
 世界トップレベル研究拠点プログラム http://www.jsps.go.jp/j-toplevel/
 東京大学国際高等研究所 http://www.todias.u-tokyo.ac.jp/
 
 
今回の発表に際し、以下のコメントが発表されました。
    東京大学総長 濱田 純一
この度、世界的に著名なカブリ財団から寄附を頂き、また、世界の名だたるカブリ研究所の1つにIPMUが加わることができたことは、大変名誉なことです。Kavli氏の国境を越えた寛大な支援が、IPMUに安定的な研究基盤を約束し、その恩恵は今後の研究成果の大きな支えとなると思われます。また、今回の支援は東京大学自体が目指すシステム改革にも大きな影響を与えました。今後もこの機会を更に大きな発展へとつなげられるように取組んでいきたいと考えています。
 
    文部科学省研究振興局長 吉田 大輔
IPMUは、日本政府の推し進める世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)によって2007年に設立され、支援されています。WPIは、日本において世界トップレベルの研究とともに、その活動が世界から見えることを促進するプログラムです。IPMU4年間という短期間内にゼロから世界的に名の知られた研究機関にまで発展を遂げました。今回、カブリ財団のような基礎科学を支援する国際的な財団から高い評価を受けたことも喜ばしいことと思っています。寄附を受けることによる名声がIPMUの世界的な認知度を更に高め、IPMUの成功を長期にわたって支える助けとなると考えています。
 
    東京大学国際高等研究所(TODIAS)所長 岡村 定矩
カブリIPMUが発足したことはすばらしい快挙です。カブリIPMUは現在TODIASに所属する唯一の研究機構であり、カブリ財団からのこの大きな贈り物は、村山機構長によって築き上げられた研究機構とその研究者の質の高さが評価されているという証拠です。カブリIPMUWPIプログラムによって設立され、現在のところその資金は10年という年限があるため、今回の基金は恒久的な収入を保証するという意味で特にありがたいものです。これは研究機構の長期的な財政基盤を確保するための重要なステップです。広く社会の皆様に対して大学基金への貢献をお願いする東大の努力に、カブリ財団による大きな贈り物が力を添えてくれることを望んでいます。
 
    カブリ財団創立者・会長 Fred Kavli
カブリIPMUを私たちの研究機関のコミュニティに歓迎します。数学から理論物理学、実験物理学に至る分野を結集することにより、宇宙に関するエキサイティングな発見につながる創造的な共同研究が呼び起こされることは確実です。知識の探求に国境はありません。私は、日本の科学に対する支援により、科学における最大かつ最も基本的な疑問そのものが国際協力によって解き明かされることを願っています。
 
    カブリ財団理事長 Robert W. Conn
私たちはIPMUのビジョンに大変興奮させられています。IPMUは全人類が深く関心を持つ科学のトピックに焦点を当て、多くの分野から優秀な研究者を集めることに尽力しています。IPMUの研究分野は私たちが支援している4分野、天体物理学、ナノサイエンス、神経科学、理論物理学のうちの2分野、天体物理学と理論物理学にわたっており、科学的知識の探求にはしばしば多くの分野にわたった協力が必要だということを示しています。私たちは東大とIPMUのリーダーシップに大きな感銘を受け、日々の生活の中での最も基本的な科学の疑問に大学のすべての人が取り組むことを期待しています。
 
    東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構長 村山 斉
私は、IPMUがカブリ研究所の一つとなることにものすごく興奮しています。このことは、IPMU国際的に認知されることになり、世界中から優秀な人材を募集するのに役立ちます。さらに、ほかのカブリ研究所との交流により共同研究の機会が加速されます。基金による収入はカブリIPMUの研究を、現在の日本政府主導のプログラムを超えて維持する助けとなります。ついに私たちは宇宙の最も基本的でかつ最大の謎に挑戦できるのです!
 
    スタンフォード大学カブリ素粒子天文物理学・宇宙論研究所長 Roger Blandford
IPMUは設立されてから5年もたっていないのに多くのことを達成しています。私はIPMUがカブリIPMUになることに感激しています。既に優れた宇宙物理の研究拠点となっており、このエキサイティングな研究分野にさらに多く貢献することができます。カブリ素粒子天文物理学・宇宙論研究所の研究者共々、将来多くの共同研究が進められるのを楽しみにしています。おめでとうございます。