小林俊行主任研究員が2015年JMSJ論文賞を受賞

小林俊行 東京大学大学院数理科学研究科教授/Kavli IPMU主任研究員小林俊行 東京大学大学院数理科学研究科教授/Kavli IPMU主任研究員

東京大学大学院数理科学研究科教授で東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)主任研究員の小林俊行(こばやし としゆき)氏が2015年JMSJ論文賞を受賞しました。

「JMSJ 論文賞」は、2010年に創設されて以来、毎年、Journal of the Mathematical Society of Japan (JMSJ) に掲載された論文のうち、特に優れたものに対し日本数学会が授与するものです。今回は第6回目となります。授賞式は2015年3月22日(日)に 明治大学駿河台キャンパスリバティタワーにおいて日本数学会年会プログラムの一環として行われます。

受賞対象となった論文は、JMSJ 66 巻 2 号に掲載された、J.Hilgert、J.Möllers 両氏との共著による「ベッセル作用素による極小表現の理論」です (JMSJ 66 (2),  (2014),  pp.349-414: Minimal representations via Bessel operators)。

「無限次元表現」は対称性を代数的に広く捉える数学的概念で、量子力学とも深く関連する一方、解析が難しいことで知られています。近年の代数的表現論の進展により、“根源的な表現”は、無限の次元とはいえども、ある意味で“小さい空間”に実現されることがわかってきました。「極小表現」と呼ばれる無限次元表現が、その最も重要なものです。
小林氏は、「表現の空間が小さい⇔空間から見ると対称性が大きい」と視点を逆転させることによって、極小表現をモチーフとした解析学の豊かな将来性を予言し、新たな数学の道を切り拓いて数学に画期的進展をもたらしました。同氏は、ドイツ、フランス、アメリカ、デンマーク、日本等の研究者グループを主導し、「極小表現の大域解析学」というテーマに関して、2003年以来、1000頁以上の論理の積み重ねによって、表現論のみにとどまらず、共形幾何学、シンプレクティック幾何学、フーリエ変換の変形理論、偏微分方程式の保存量、4階の微分方程式に対する特殊関数論など様々な分野の研究に影響を与えてきました。根源的な表現は、「誘導」という既存の手法では構成不可能なところを、本論文では極小表現をシュレディンガー・モデルとして具体的に構成したその統一的手法が評価され、今回の受賞につながりました。

受賞にあたり、小林氏は「極小表現の大域解析は、自身が没頭した研究テーマの中では、比較的最近のものですが、対称性が凝縮された無限次元の空間には、宝物の泉があるように感じます。深めれば深めるほど、泉が湧いてくるのが楽しい」と述べています。

小林俊行氏 略歴
1985年 東京大学理学部数学科卒業
1987年 東京大学大学院理学系研究科修士課程修了
1987年 東京大学理学部助手
1991年 東京大学教養学部助教授
1992年 東京大学大学院数理科学研究科助教授
2001年 京都大学数理解析研究所准教授
2003年 京都大学数理解析研究所教授
2007年4月- 東京大学大学院数理科学研究科教授
(2011年6月- 現在 東京大学数物連携宇宙研究機構主任研究員)

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