すばる望遠鏡 Hyper Suprime-Cam が描き出した最初のダークマター地図

図1. Hyper Suprime-Cam で観測された天体画像の一部 (大きさ 14 分角 × 8.5 分角) と、解析で得られたダークマター分布図 (等高線)。(クレジット:国立天文台/HSC Project)図1. Hyper Suprime-Cam で観測された天体画像の一部 (大きさ 14 分角 × 8.5 分角) と、解析で得られたダークマター分布図 (等高線)。(クレジット:国立天文台/HSC Project)

国立天文台、東京大学などカブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) の研究者を含む研究チームは、ハワイのすばる望遠鏡に新しく搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム, HSC) を用いて、2.3平方度にわたる天域におけるダークマターの分布を明らかにし、銀河団規模のダークマターの集中がこの天域に9つ存在することを突き止めました。本研究成果はHSCで得られた最初の科学的成果です。

HSCは8億7000万画素を持ち満月9個分の広さの天域を一度に撮影できる世界最高性能の超広視野カメラです。今回の研究成果に関する論文の第一著者である国立天文台の宮崎聡准教授を中心とするチームが2002年からHSCの検討を開始し、Kavli IPMUは2007年より開発に参加してきました。国立天文台やKavli IPMU、米国のプリンストン大学等が共同で開発を行い、2012年にすばる望遠鏡に搭載され、性能試験観測を経て2014年3月から共同利用観測が開始されました。

今回の成果について村山斉Kavli IPMU機構長は以下のようにコメントしています。
「今回の発表で、HSCでの宇宙の大規模観測が本格始動したことがよくわかります。これから宇宙を広くかつ深く観測し、暗黒物質の分布、宇宙の構造の成長、その陰にある暗黒エネルギーの性質を調べることができます。また、今まで観測できなかったような暗い天体や遠くの天体をたくさん発見することでしょう。これから天文台、プリンストン、台湾天文天体物理研究所と協力して、驚くべき結果がでてくるのが楽しみです。」

研究チームはHSCを用いて最終的に観測天域を1000平方度以上に広げ、ダークマターの分布とその時間変化から宇宙膨張の歴史を精密に計測する、という課題に取り組みます。今後、HSCによるより広い天域の観測から様々な謎が明らかにされていくことが期待されます。

本研究成果はアメリカ天文学会の発行する天体物理学専門誌アストロフィジカル・ジャーナル (Astrophysical Journal) の2015年7月1日号に掲載されます。
論文タイトル:Properties of Weak Lensing Clusters Detected on Hyper Suprime-Cam 2.3 Square Degree Field
著者:Miyazaki et al.
DOI:10.1088/0004-637X/807/1/22
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詳しくは国立天文台ハワイ観測所のプレスリリースをご覧下さい。