2021年8月25日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)
韓国にあるアジア太平洋理論物理センター (APCTP) は、カリフォルニア工科大学教授を兼ねる東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) の大栗博司 (おおぐりひろし) 機構長に対して、 Benjamin Lee (ベンジャミン・リー) 教授職を授与することを発表しました。
Benjamin Lee 教授職は、素粒子理論物理学の分野で卓越した業績をあげた韓国出身の理論物理学者 Benjamin Lee 氏の貢献を称えて創設されました。Benjamin Lee 教授職となった研究者は、APCTP から招聘を受けて、韓国国内の研究者や大学院生と研究交流を行うための長期滞在の支援を受けることが出来ます。過去の Benjamin Lee 教授職の選出者には、宇宙論研究で著名な Alessandra Buonanno 氏や Viatcheslav Mukhanov氏 (両名ともディラック賞受賞者)、1999年ノーベル物理学賞受賞者の Gerardus 't Hooft 氏も含まれています。大栗機構長は、超弦理論、量子ブラックホール、超対称ゲージ理論、数理物理学といった研究への貢献が評価されました。
大栗機構長は Benjamin Lee 教授職に選ばれたことについて、「Benjamin Lee 氏は著名な理論物理学者で、米フェルミ国立加速器研究所 (Fermilab) の理論部門長でした。残念なことに、シカゴからアスペンに行く途中に交通事故に遭い42歳でお亡くなりになりました。私は大学院一年生の時に彼の総説論文や講義録で非可換ゲージ理論の量子化を勉強し、これが現代的な場の理論の方法に触れた最初の経験でした。そのため、今回の受賞はとりわけ光栄に思います」と述べています。
今年2021年10月の韓国物理学会の秋の総会で授与式と記念講演が行われる予定で、記念講演前後には 数日にわたり大栗機構長が APCTP に訪問し連続講義を行う予定です (※新型コロナ感染拡大に伴い、状況により訪問が難しい場合は、昨年同様オンライン開催となる見込みです)。
Benjamin Lee 教授職の概要や歴代選出者等の詳細は、アジア太平洋理論物理センター (APCTP) のウェブページをご覧下さい。
Benjamin Lee 教授職 授賞式の様子 (2021.10.21 更新)
大栗氏の経歴等
学歴
1984年:京都大学理学部卒業
1986年:京都大学大学院修士課程修了
1989年:東京大学より理学博士号を授与される
職歴
1986 - 1989年:東京大学理学部物理学教室助手
1988 - 1989年:プリンストン高等研究所研究員
1989 - 1990年:シカゴ大学物理学教室助教授
1990 - 1996年:京都大学数理解析研究所助教授
1996 - 2000年:カリフォルニア大学バークレイ校教授
1996 - 2000年:ローレンス・バークレイ国立研究所上級研究員を併任
2000年より:カリフォルニア工科大学教授
2007年より:カリフォルニア工科大学カブリ冠教授
2007年より:東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)主任研究者
2014年より:カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所の初代所長に就任
2016年- 2019年:アスペン物理学研究所所長
2018年より:東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)機構長に就任 (10月15日付)
2021年より:アスペン物理学研究所理事長 (7月13日付)
受賞歴
2008年:第1回アイゼンバッド賞(アメリカ数学会)
2008年:フンボルト賞(アレキサンダー・フォン・フンボルト財団)
2008年:第4回高木レクチャー(日本数学会)
2009年:仁科記念賞(仁科記念財団)
2012年:第1回サイモンズ研究賞(サイモンズ財団)
2012年:アメリカ数学会フェローに選出
2014年:科学出版賞(講談社)
2016年:科学監修を務めた映像作品『9次元からきた男』が最優秀教育作品賞(国際プラネタリウム協会)を受賞
2016年:中日文化賞(中日新聞)
2016年:アメリカ芸術科学アカデミー会員に選出
2018年:ハンブルク賞
2019年:紫綬褒章