2023年7月21日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構（Kavli IPMU）の中島啓 (なかじま ひらく) 教授が、2つの部門で Frontier of Science Award を受賞しました。受賞部門は「ホモロジー代数学、K理論、非可換代数幾何学」と「超弦理論と凝縮系物理における数学」の2部門で、中島啓教授の2つの共著論文が対象となり、現在中国の北京で開催中の第1回国際基礎科学大会 (ICBS) の席上で発表されました。
ICBS は、北京市人民政府が主催となって資金提供を行い開催された国際会議で、世界中の科学、なかでも特に数学、理論物理学、理論計算機科学、情報科学といった分野の基礎科学研究を支援・促進することを目的としています。今後年次大会として開催されていく予定で、今回が第1回目になります。
そして、この国際大会で受賞者が発表された Frontier of Science Award は、基礎科学のフロンティアに目を向けて一日も早く画期的成果を得ることを目標に掲げ、自然界の謎に挑む人類の研究に知恵とエネルギーを与えている若手研究者を奨励することを目的としています。具体的には、過去5年間に発表された34分野の科学的業績のうち、科学的価値と独創性が最も高く、さらに、その分野に重要な影響を与えるとともに研究者からも評価・受容された成果を表彰するとしています。
今回の受賞について中島啓 Kavli IPMU 教授は以下のように述べています。
「Alexander Braverman 氏と Michael Finkelberg 氏との共著論文2本が Frontier of Science Award を受賞し、大変光栄です。また、我々数学者に対して、クーロン枝について教えて下さった沢山の物理学者の方々、特に Edward Witten 氏と Amihay Hanany 氏には感謝申し上げます。さらに、Tom Braden 氏、Anthony Licata 氏、Nicholas Proudfoot 氏、Ben Webster 氏によって提唱されたシンプレティック双対性についても言及しておきたいです。この予想によって、私達の結果は幾何学的表現論におけるホットトピックとなりました。
箙 (えびら) は、私が長年にわたって気に入っているトピックであり、アフィン・グラスマンは Misha と Sasha が気に入っているトピックです。この論文で2つのトピックが結びついたのは素晴らしいことです。この論文の結果は、1996年にアイザック・ニュートン数理科学研究所での講義で Edward Witten 氏 が説明していました。それから18年後に、彼が言っていたことを数学的に厳密に理解できた時は大変嬉しかったです。」
・Frontier of Science Award の対象となった論文情報等詳細
受賞部門: Homological Algebra, K-Theory and Noncommutative Algebra
論文タイトル: Coulomb branches of 3d N=4 quiver gauge theories and slices in the affine Grassmannian
論文誌: Advances in Theoretical and Mathematical Physics (2019)
著者: Alexander Braverman (University of Toronto)
Michael Finkelberg (HSE University)
Hiraku Nakajima (IPMU)
受賞部門: Mathematics of String Theory and Condensed Matter
Paper title: Towards a mathematical definition of Coulomb branches of 3-dimensional N = 4 gauge theories, II
論文誌: Advances in Theoretical and Mathematical Physics (2018)
著者: Alexander Braverman (University of Toronto)
Michael Finkelberg (HSE University)
Hiraku Nakajima (The University of Tokyo)
関連リンク
Frontier of Science Award の受賞者一覧 (ICBSのウェブサイト)
中島啓教授のウェブサイト