2024年9月27日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU, WPI)
2024年9月2日から6日、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU, WPI) のデータ駆動型探究センター (CD3) は、宇宙物理学における人工知能 (AI) 利用の開拓を目指す新たな取組みの先駆けとして、アジアの若手研究者を対象に大阪でサマースクールを開催しました。
この取組みは、CD3 を含む日本の研究機関と中国、台湾、韓国、ハワイの計12研究機関(※) によって発足したAstro-AI Asian Network (A3Net) による最初の活動です。台風18号の影響による交通機関の乱れにもかかわらず、多くの参加者が来日し、参加機関の若手研究者70名が天体物理学における AI の入門を学びました。
AI と機械学習が宇宙物理学研究の進展において重要な役割を果たしていくことは今後間違いなく、宇宙物理学分野は現状においても、膨大な観測データ、明確な科学目標、開かれた文化を有しており、機械学習による知見の発見に理想的な機会を提供しています。しかしながら、多くの機械学習技術が斬新なものであることから、A3Net の参加機関は、アジアの次世代を担う宇宙物理学者を育成していく必要を認識しており、今回の取組みの実現へと繋がりました。
サマースクールの参加者の大半は大学院生でしたが、学部生やポスドクも多数参加していました。開催期間中、参加者は講義を受け、実習を行い、各々に与えられた研究課題において新たに学んだ AI 技術を実践しました。
CD3 所長の Jia Liu(ジア・リウ)Kavli IPMU 特任准教授は、「参加者が研究課題で示した実践能力の高さに特に感銘を受けました。彼らは講義で学んだ理論的な内容をスムーズにコードに変換することができていました。いくつかの課題は、論文として今後発表できる可能性もあります」と述べています。
今回のスクールの主要な講演者には、天体物理学者で広島大学の植村誠准教授、データ駆動型の宇宙論研究者である Kavli IPMU のLeander Thiele 特任助教、データサイエンティストで米国宇宙望遠鏡科学研究所 (STScl) の Michelle Ntampaka 氏、宇宙論研究者で東京大学理学系研究科の森脇可奈助教が含まれていました。
参加者の反応は好意的で、全員から来年のサマースクールを仲間に勧めるつもりだとの回答がありました。また、
「運営委員会の皆様、本当にありがとうございました。良い経験になりました!」
「全体的に素晴らしいワークショップで、多くのことを学ぶことができ、新しい友人もできました!」
「来年もぜひ参加したいです。大学院生にとって、今回のワークショップの難易度は適切だったと思います。」
「CD3と大阪大学に、このようなワークショップを開催していただき、本当にありがとうございました。」
などのコメントも寄せられました。
来年の A3Net サマースクールの計画は既に始まっており、現在の参加機関の枠組みを超えたアジア全域の AI に関心のある宇宙物理学者のネットワークを確立する検討もされています。
謝辞:大阪大学の長峯健太郎教授が現地でのサポートを提供し、参加者の懇親会や奈良へのエクスカーションの企画まで行いました。Kavli IPMU 特任研究員で CD3 の Kateryna Vovk 氏が大半の企画を担当し、Kavli IPMU 特任研究員で CD3 の César Jesús-Valls 氏が研究課題の設定を行いました。
※A3Net の参加研究機関
・東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)データ駆動型探究センター(CD3)
・大阪大学 フォアフロント研究センター理論連携研究プロジェクト
・復旦大学
・ハワイ大学
・香港大学
・北京大学カブリ天文天体物理研究所 (KIAA)
・韓国高等科学院 (KIAS)
・名古屋大学 素粒子宇宙起源研究所
・国立台湾大学 LeCosPA
・上海交通大学
・中国科学院上海天文台
・精華大学