大栗博司Kavli IPMU主任研究員、 サイモンズ研究賞の初代受賞者に選ばれる

2012年7月24日

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(略称:Kavli IPMU)

米国のサイモンズ財団は2012年7月24日、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)主任研究員でカリフォルニア工科大学のカブリ冠教授の大栗博司氏が、サイモンズ研究賞の初代受賞者に選ばれたことを発表しました。大栗氏には今後10年間にわたり総額で132万ドル(約1億円)の研究資金が支給されます。 

サイモンズ研究賞は、大きな業績をあげた科学者を顕彰し、基礎的な問題にじっくり取り組めるよう安定した研究資金を提供することを目的に、サイモンズ財団が本年度より始めた制度です。初年度の今年には物理学、数学、コンピュータ科学などの幅広い分野から21名が選ばれ、素粒子物理学からの受賞者は大栗氏だけでした。
 
サイモンズ財団の発表によると、大栗氏は「類まれなる創造力と学問の幅を持つ研究者である」ことから受賞者に選ばれました。授賞理由では、(1)トポロジカルな弦理論を超弦理論に応用する革新的な方法、(2)カラビ‐ヤウ多様体の研究を通じたDブレーンに関する重要な発見、および(3)重力のホログラフィー原理の発展への本質的な貢献が讃えられています。 


大栗博司氏の談話
「湯川秀樹先生がおっしゃったように、未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅人です。はるかな国からすばらしい発見を持ち帰るためには、長期の展望にたってリスクを取らないといけません。サイモンズ賞の安定した研究資金は、受賞者の私たちがそのような長い旅に向かうことを可能にしてくれました。期待に応えられるようにさらに努力します。」
 
Kavli IPMU村山機構長の談話
「すばらしいニュースです。大栗氏は数理科学の分野で世界的なリーダーです。これは、アメリカ数学会のアイゼンバッド賞の初代受賞者に選ばれ、カリフォルニア工科大学では物理学と数学の両学部の教授であることにも現れています。『物理と数学の力を結集して宇宙の謎を解く』 Kavli IPMUを構想し設立したときにも彼の力がどうしても必要でした。この賞を受賞するのは世界中に大栗氏をおいて他にはいないのは明らかです。サイモンズ財団もそう判断したということです。大栗さん、本当におめでとうございます。」
 
カブリ財団創設者フレッド・カブリ氏の談話
「サイモンズ財団のサイモンズ研究賞受賞者に選ばれておめでとうございます。まことにすばらしい名誉で、誇りに思います。」
 
カブリ財団理事長ロバート・コン氏の談話
「サイモンズ財団の新しいプログラムの初代の受賞者となられたことに心よりお祝いを申し上げます。科学者や数学者に自由に使える研究資金を支給するというこのプログラムの目的は、基礎科学の支援としてすばらしいものです。カブリ冠教授がこの賞に選ばれたことを、カブリ財団としてうれしく、また誇らしく思います。」


大栗博司氏略歴:
学歴
1984年:京都大学理学部卒業。
1986年:京都大学大学院修士課程修了。
1989年:東京大学より理学博士号を授与される。
 
職歴
1986 - 1989年:東京大学物理学教室助手
1988 - 1989年:プリンストン高等研究所研究員
1989 - 1990年:シカゴ大学物理学教室助教授
1990 - 1994年:京都大学数理解析研究所助教授
1994 - 2000年:カリフォルニア大学バークレイ校教授
1996 - 2000年:ローレンス・バークレイ国立研究所上級研究員を併任
2000年より:カリフォルニア工科大学教授
2007年より:カリフォルニア工科大学カブリ冠教授
2007年より:東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)主任研究員
 
受賞歴
2008年:第1回アイゼンバッド賞(アメリカ数学会)
2008年:第4回高木レクチャー(日本数学会)
2009年:フンボルト賞(アレキサンダー・フォン・フンボルト財団)
2009年:仁科記念賞(仁科記念財団)
 
著書
「重力とは何か」(幻冬舎新書)
「素粒子論のランドスケープ」(数学書房)
 
ホームページ
http://db.ipmu.jp/member/personal/769ja.html
http://www.theory.caltech.edu/~ooguri/index_j.html
 

サイモンズ財団(Simons Foundation,  https://simonsfoundation.org/):
ジェームズ・サイモンズ夫妻が1994年に設立。数学と基礎科学の最先端の研究を推進することを目的とする。数理科学の分野では、2007年にストーニーブルック大学に6千万ドル(約50億円)を寄付して「サイモンズ幾何学‐物理学センター」を設立、また2012年にはカリフォルニア大学バークレイ校に同額の寄付をして「サイモンズ計算機理論研究所」を設立したほか、数学と諸科学との境界領域の冠講座の設立、ポストドクトラル・フェローの支援やシンポジウムの開催など様々な活動を行っている。
 
ジェームズ・サイモンズ(James Simons)氏:

数学者として幾何学の分野で業績をあげ、ストーニーブルック大学の数学教室主任を務めた後、金融業界に転身。1982年にヘッジファンド会社「ルネッサンス・テクノロジー」を設立し、280億ドル以上の資金を持つ会社に育て上げた。


お問い合わせ先:

        東京大学国際高等研究所 Kavli IPMU広報担当

土方智美(ひじかた ともみ) 

大林由尚(おおばやし よしひさ)

E-mail: press _at_ ipmu.jp               Tel: 04-7136-5977/5974