井上邦雄主任研究員が仁科記念賞を受賞

2012年11月9日
カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)

仁科記念財団は、Kavli IPMUの主任研究員であり、東北大学ニュートリノ科学研究センター教授の井上邦雄氏に、2012年度仁科記念賞を授与することを、11月9日に発表しました。授賞業績は、「地球内部起源反ニュートリノの検出」としています。

仁科記念賞は我が国で最も歴史と権威のある物理学賞で、1955年より毎年、仁科記念財団が原子物理学とその応用に関し、優れた研究業績をあげた比較的若い研究者を表彰しています。ノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈、小柴昌俊、小林誠、益川敏英の4博士もこの賞を受賞しています。

井上主任研究員は、カムランド(神岡液体シンチレータ反ニュートリノ観測装置)実験において指導的役割を果たし、現在、実験代表者として研究を推進しています。井上氏は原子炉ニュートリノ振動観測の成功によるニュートリノ伝搬の理解、検出装置の緻密な較正、バックグラウンドの詳細な評価を行い、2005年に地球内部のウラン、トリウムの放射性物質の崩壊から来る反電子型ニュートリノの観測を世界で初めて成功に導きました。さらに2010年には99.997%の信頼度で地球ニュートリノを検出し、2011年には、地球内部での放射性熱生成21±9兆ワットを導出し、地表の熱流量47±2兆ワット(測定)と比べて半分程度であることを突き止め、地球が冷え続けていることを初めて直接的な実験で検証しました。これによって、地球内部化学組成モデルを評価し、ニュートリノ地球科学研究の第一歩を築きました。仁科記念財団は、「これらの成功は、ニュートリノを利用した学際的研究を新たに開拓し、地球内部の直接的観測を通したニュートリノ地球科学の発展の礎となるものである。」と賞賛しています。

  • 参考URL

仁科記念財団

東北大学ニュートリノ科学センター