大栗博司教授が国際基礎科学会議の先端科学賞を受賞

2024年7月18日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU, WPI)
 

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU、WPI)の大栗博司 (おおぐり ひろし) 教授が、先端科学賞(Frontier of Science Award)を受賞しました。受賞部門は「理論物理学(弦理論と量子重力)」で、大栗博司教授とマサチューセッツ工科大学の Daniel Harlow 准教授との共著論文が対象になりました。中国北京で開催中の第2回国際基礎科学会議の初日7月14日に授賞式が行われました。

大栗教授は、受賞講演のほかに、科学監修を務めた映像作品『9次元からきた男』の上映とその解説講演、中国語に翻訳された5冊の科学解説書についての一般講演を行い、基礎科学についてのパネル討論にも参加する予定です。
 

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7月14日に行われた先端科学賞の授賞式の様子。中央が大栗博司 Kavli IPMU 教授 (Credit: ICBS 2024)


国際基礎科学会議は、北京市人民政府などが主催する国際会議で、基礎科学の3分野(数学、理論物理学、計算機・情報理論)の最先端の研究者1000名以上が参加します。大栗教授が受賞した先端科学賞は、この3分野の過去10年間に出版された論文の中で、価値と独創性が最も高く、その分野に重要な影響を与え、研究者から高く評価されたものを表彰しています。 
 

今回対象となった論文は、場の量子論と量子重力理論に関する内容の論文です。大栗教授は2019年に Daniel Harlow 准教授と共同で、量子重力理論においては、素粒子論の重要原理であるグローバル対称性がすべて破れてしまうことを、量子誤り訂正符号とホログラフィー原理との関係性を用いるという新たな手法を用いて証明しました。この研究成果は、素粒子の究極の統一理論の構築に大きく貢献するものであるとともに、近年注目される量子コンピューターの発展にも寄与すると期待され、フィジカル・レビュー・レター誌 (Physical Review Letters) に掲載され、成果の重要性から注目論文(Editors’ Suggestion)に選ばれています。今回授賞対象となった論文は、この2019年の成果を更に掘り下げたものとして2021年に 数理物理学の専門誌 Communications in Mathematical Physics 誌に発表された論文です。
 

受賞について大栗博司 Kavli IPMU 教授は以下のように述べています。
「授賞対象となった論文は、ジョン・ホィーラーが70年近く前に提唱した『量子重力はグローバル対称性を持たない』という予想を、反ドジッター時空間において、基本原理から証明したものです。私自身、この論文をとても気に入っており、先端科学賞に選ばれたことをとても光栄に思います。共著者の Daniel Harlow さんに感謝するとともに、国際基礎科学会議と選考委員会にお礼を申し上げます。」 
 

・Frontier of Science Award の対象となった論文情報等詳細
受賞部門: Theoretical Physics (String Theory and Quantum Gravity)
論文名: Symmetries in Quantum Field Theory and Quantum Gravity
論文誌:  Communications in Mathematical Physics  (2021)
著者: Daniel Harlow (Massachusetts Institute of Technology)
Hirosi Ooguri (California Institute of Technology & University of Tokyo)


関連リンク
先端科学賞の受賞者一覧 (国際基礎科学会議のウェブサイト)
大栗博司教授のウェブサイト

 


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