大栗真宗 准科学研究員が2018年度の林忠四郎賞を受賞

2019年3月14日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)
 

東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センター助教で、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) 准科学研究員の大栗真宗 (おおぐり まさむね) 氏が2018年度の林忠四郎賞を受賞しました。

林忠四郎賞は初期宇宙の元素合成、星の進化、太陽系の起源等などの多岐にわたる研究で偉大な業績を挙げた理論天体物理学者の林忠四郎博士の京都賞受賞を記念して1996年度に設けられた賞で、惑星科学や天文学、宇宙物理学に関する分野において優れた研究業績をあげた研究者を表彰することを目的としています。2019年3月14日から17日に法政大学小金井キャンパスで開催される2019年の日本天文学会春季年会の場で授賞式と受賞記念講演が行われる予定です。

今回受賞対象となった研究は「重力レンズ天文学への基礎的貢献」です。大栗氏は理論と観測の両面から重力レンズ現象を宇宙論と天文学の広範な問題に応用した研究に長年取り組み、宇宙のダークマター分布や遠方天体の研究などの幅広いテーマで多くの画期的な成果を上げてきたことが評価されました。

大栗氏は、2011年4月から2013年8月まで Kavli IPMU の特任助教として所属し、重力レンズ現象を用いた観測的宇宙論研究に精力的に取り組んできました。現在でも、ハワイのすばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC; ハイパー・シュプリーム・カム) を用いた大規模観測から得られたデータ解析において、解析グループの中心となる高田昌広 Kavli IPMU 主任研究者をはじめとした Kavli IPMU の研究者と強い繋がりを持ち、共に研究を行なっています。

今回の授賞について大栗氏は以下のように述べています。
「このたび、Kavli IPMU で行った超新星重力レンズの発見や銀河団内のダークマター分布測定などの研究が評価されて林忠四郎賞を受賞することとなりました。多くの共同研究者の皆様に感謝いたします。今後も HSC サーベイデータの解析などの研究で良い成果が得られるよう頑張りたいと思います。」 

また、大栗氏が Kavli IPMU 特任助教として所属していた当時から現在にわたって、多数の共同研究を行い大栗氏と繋がりの深い高田昌広 Kavli IPMU 主任研究者は「大栗さんは、私の共同研究者のなかでも最も信頼できる、優秀な研究者の一人です。日本、台湾、プリンストン大学の研究者が参加するすばる HSC の大型プロジェクト、特に重力レンズに関係する研究で中心的な役割を担い、国際チームをリードしています。重力レンズは光で見えないダークマターの分布でさえも明らかにすることも可能にしますが、大栗さんがリードした HSC チームは世界最大のダークマターの地図を作成することに成功しました。すばるのデータを用いた研究成果で世界をあっと言わせられるように、これからも一緒に研究を頑張りましょう」と述べています。
 

大栗真宗氏 略歴
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2004年 東京大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了
2004年 プリンストン大学博士研究員
2006年 スタンフォード大学博士研究員
2009年 国立天文台研究員
2011年  東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構特任助教
2013年 東京大学大学院理学研究科助教および東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構准科学研究員
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関連リンク
2018年度 日本天文学会各賞について
林忠四郎賞歴代受賞者
大栗真宗氏 ウェブページ
東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センター
 

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