2024年3月6日
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU, WPI)
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU, WPI) の高田昌広 (たかだ まさひろ) 教授が2023年度の林忠四郎賞を受賞しました。
林忠四郎賞は初期宇宙の元素合成、星の進化、太陽系の起源等などの多岐にわたる研究で偉大な業績を挙げた理論天体物理学者の林忠四郎博士の京都賞受賞を記念して1996年度に設けられた賞で、惑星科学や天文学、宇宙物理学に関する分野において優れた研究業績をあげた研究者を表彰することを目的としています。2024年3月11日から15日に東京大学本郷キャンパス (3月13日から15日はフルオンライン) で開催される2024年の日本天文学会春季年会の場で授賞式と受賞記念講演が行われる予定です。
今回の受賞理由は「すばる望遠鏡データを用いた精密宇宙論の探求」です。高田教授は、ハワイ島のマウナケア山頂 (標高4,200 m) のすばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC) を用いて原始ブラックホール探査を行い、太陽質量の 10-11 から 10-6 倍の質量範囲において原始ブラックホールのダークマター説を世界で初めて棄却したほか、「すばる HSC 戦略枠観測プログラム (HSC-SSP)」のサイエンスワーキンググループのリーダーとしてデータ解析を主導してきました。そして、HSC-SSP で得た膨大な遠方銀河の画像データ解析を主導し、遠方銀河が手前の重力源により像が僅かに歪められる「弱重力レンズ」の度合いを測定することで、宇宙の構造形成の進行度合いを表す物理量 (S8) の検証を行ってきました。HSC-SSP の結果からは宇宙の標準理論の綻びを示す結果が示されており、更なる検証が待たれています。さらに、解析の肝となる弱重力レンズの様々な効果に関する理論的研究にも長年取り組んできました。こうした弱重力レンズの理論研究とすばる望遠鏡 HSC を用いた観測研究で国際的に高く評価される多数の研究成果を挙げ、宇宙論分野の発展に貢献してきたことが高く評価されました。また、2024年の科学運用開始を目指し準備が進められているすばる望遠鏡の超広視野多天体分光器 PFS のサイエンスワーキンググループのリーダーとしてもプロジェクトを牽引しており、今後の国際的な活躍が期待されています。
今回の授賞について高田教授は以下のように述べています。
「このたび、すばるデータを用いた研究が認められ、日本天文学会林忠四郎賞を頂くことになり、大変光栄です。指導してくださった先生、推薦してくださった先生、多くの共同研究者の皆様に感謝いたします。この賞を励みとして、より一層宇宙論の研究に取り組んでいきます。次はすばる PFS の大型プロジェクトがいよいよ始まりますので、ご指導・ご支援のほどよろしくお願いします。」
高田昌広氏 略歴
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2001年 東北大学大学院理学研究科博士課程修了
2001年-2002年 国立天文台 JSPS フェロー
2002年-2004年 ペンシルベニア大学博士研究員
2004年-2008年 東北大学大学院理学研究科助教
2008年 東京大学数物連携宇宙研究機構特任准教授
2012年 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構特任教授
2013年-現在 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構教授
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関連リンク
2023年度 日本天文学会各賞について
2023年度 日本天文学会各賞授賞理由
林忠四郎賞歴代受賞者
すばる HSC 戦略枠観測プログラム (HSC-SSP)
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